バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

2014年12月

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

オケ曲をやっていて思うこと

アマオケに参加して1年以上経過したが、レッスンで習っていない独特の風習みたいなものに戸惑いつつも、レッスンでは習うことがないこともいろいろあって面白い。

独特の風習というのは、いろいろある。

●ボーイング

小節の頭をダウンボーにするというもので、長いスラーの音型は仕方ないとしても、短いスラーの音型であっても、この原則を適用するために弓順を変更するということしばしばある。クラシック音楽は楽譜通りというのが原則があるが、ボーイングの都合によって、作曲家の指定を無視していることはよくあるし、実際に演奏する場合は、そうせざるを得ない場合も多い。

レッスンの曲と違うのは、奏法上配慮、演奏上での効果を狙ってトリルや一弦弓スタッカートはアップボーで演奏する指定が多いのだが、オケ曲では、原則遵守の力学の方が強く、こうしたことは考慮されない。

とは言え、時代考証的要素も少しは必要なのかもしれない。例えば、ビバルディなどのリトルネッロ形式の曲では、同じ音型の場合でも、ダウンとアップを交互にするとかが定石、モーツアルトの場合は、ダウン・ダウンというボーイングよりもアップ・アップで持ってくる方がよい場合が多いのであるが、これを指摘してくる人はあまりいない。

●重音

重音は、弾ける音を弾くという暗黙のルールがあり、これには違和感があるので、プルト内で相談して、どちらが上を弾くのか、下を弾くのか決めてもらっている。ちなみに三重音とか四重音を2音ずつ分けてカッコよくジャランと弾くのは、指揮者から怒られるので、分けて弾くことには意味がある。ちなみに私は、譜面に書かれている音符はすべて弾きたい派なのでいつも怒られている。

マイスタージンガー


●ポジション移動や指使い

入団したての人から質問されてハッとしたのであるが、「ポジション移動や指使いは統一しないのか?」ということである。合奏の場合はこれでいろいろな音がブレンドされることになるので、良いことなのかもしれないと言っておいたが、ご本人様は不本意であるような顔をされていた。オケによっては統一しているところもあるのだろう。いずれにせよ統一するだけで、相当な稼働がかかることになる。

●トリル

トリルの数や音型の統一はしないのかとオケの指導者に質問してみたのだが、一笑にふされてしまった。オケのみんなにも笑われたので、「そんなに変な質問?」、「あるいは常識の類?」だったのかと思ったのだが、別のオケの弦楽器セクションの先生からは、統一すべきという指示があり、同じ現役プロオケの先生でも見解がいろいろあるのだろう。ちなみに我が師匠の場合は、トリルの数を指定するので、間違えるとしかられます。

●小指酷使

レッスン曲では、あまり出てこない小指を酷使する音型が、永遠と拷問のようにでてくるところが、オケ曲のすごいところである。セブシックとかでゴシゴシやるよりも、オケの曲の方が実践的、かつ強制的な拷問練習になる。おかげで随分と小指の動きが速くなった。

ベートーヴェンで田園

●ボジション移動

音型的にセカンド・ポジション、フォース・ボジションを使った方がよい場合が多く、練習教材としては良いのであるが、日頃から練習しておかないと音程が心配になる。なお、Simon FischerのScales教本では、各音階ごとで、さらに各ポジジョンごとにエクササイズが沢山掲載されているので、掻い摘んでやっておくのが良いと思う。

●変ト長調または変ホ短調

レッスンの曲では、あまりお目にかかることはないが、オケ曲では頻繁に出てくるので、音階練習と、分散和音練習はしておいた方が良いのであろう。特に「Cのフラットって何?」ということはよくあり、これだけでハーモニーが崩壊する現場を何回も見てきた。おそるべしCesの力である。

嵐


次回は、忙しい人のためのオケ曲ウォーミングアップについて書いてみることにする。
 

顎当てSAS

ネットを見ていると、たくさんのバイオリン・マニアがいて面白い記事を載せておられる人はたくさんいる。その中で、前々から気になっていたのが、顎あてSASという商品である。そんな折に、年末のセールがあるというので購入した製品が以下である。


顎あてというのは、色々と種類があり、ガルネリ型とかフレッシュ型、ドレスデン型とかあるが、SASはその中でも新しい形であり、他の型とは違い取り付け方に自由度がある。ここのところは、SASの代理店を見てもらうことにして、私が気になっていたのが音の改善の方である。なので、木の種類は梨木を選択しておいた。なお高さは、24mmである。

ただ、梨木は黄色が強い色なので、デザイン的にどうかと思っていたのだが、やってきたのは、赤茶色をしており、バイオリンの色ともマッチしており、うれしい誤算であった。

で位置を試行錯誤しながら早速取り付けてみたのだが、こんな感じ。顎あては、意外に簡単に外せるもんだと感心。ただ、後から佐々木さんのQ&Aを読むと、顎あての交換は職人に任せるべしとあるので、なるべくならそうした方がよいであろう。

SASを取り付けてみた


やはり、音は変化する。特にA線とE線にシャリシャリ感が出ているような気がする。ここで面白いので、バイオリンの開放弦を録音したものをスペアナ・ソフトで解析してみた。なお弦は、ラーセン・ヴィルトゥオーゾを使用している。

●G線
G3

SAS_G3

●D線
D4

SAS_D4

●A線

A4

SAS_A4

●E線
E5

SAS_E5

E線の方で、4K以上のところで高域が出ている気がするが、これだけでは、わかりずらい。たぶん専門的な分析方法があるのであろう。

むしろ、E線では20Kを超える成分も随分とあるということの方が驚きであった。

元気バイオリン

本日、トッパンホールへ行ってきた。
アラベラ・美歩・シュタインバッハー
ピアノ:ロベルト・クーレック

モーツァルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調 K301(293a)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調 Op.96
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 Op.115
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18 

アラベラ・美歩・シュタインバッハー


アラベラ・美歩・シュタインバッハーは、今回で2回目に聴くリサイタルである。前回は、シュニトケのバイオリン・ソナタ第2番で凄い演奏を聴かせてもらったのを覚えているし、めったに演奏されることのないミヨーのバイオリン協奏曲の第2番のCDは、この曲の醍醐味がわかるとても良い演奏であった。

何年か前のN響の印象に残るコンサートのアンケートで、かなり上位にノミネートされていたのも覚えている。確か曲は、ベルクのヴァイオリン協奏曲であったと思う。それ故に、現代曲が得意な元気バイオリンという印象が強く残っているのであった。

しかして、若手の才能のあるバイオリニストを率先して演奏させているトッパンホールなんかでは、もう少し早めに登場にしても よかったのであるが、ようやく今日ということになった。

で、会場に行ったのであるが、このクラスのバイオリニストにしては、観客がすくないかなあと思ったのであるが、12月は何かに忙しいし、第九とかのオーケストラ曲に人気があるので、こうしたことも影響しているのかもしれない。

で、どこまで成長したのか楽しみにしつつ、第1曲目のモーツアルトの演奏が始まった。

まあ、普通というか、えらく大人しくなったというか、お顔まで日本人ソリストのような感じで、丁寧には弾いていて、ある意味、コンクール的な演奏であり、手本にはなると思うが、私の期待しているのは、カルミニョーラのやっているような今ここでモーツアルトが作曲してできたようなできたてホヤホヤ感であるので、なんか、小物ソリストに成り下がったような感じがしてがっかりしたのであった。 

次のベートーヴェン。最近は、イザベル・ファーストのベートーヴェンを極め尽くしたような演奏を聴いているので、これと比べれば、如何にも平凡。 ベートーヴェンなのだからもっと思い切った表現でもよいのでは思った次第であった。クレーメルなんかの演奏だと、ピアニストがあの有名な人なので、あれなんだが、二人共に合わせる気などはまるでなく、それはそれで緊張感のある演奏なのであった。

 ロベルト・クーレックは、バイオリニストに合わせてあげるタイプの演奏家なのだろうなあ。

さて、さて、拍手もまばらであったし、このような演奏ならトッパンホールの観客だと、日頃からテツラフ、カルミニョーラ、コパチンスカヤ、ツェートマイヤーとか聴いている人達なので、次は来ないんじゃないか 心配になったのであった。

でも、後半のプログラムで不思議なことがあった。少し客が増えているのである。年末ということもあるのかもしれないが、やはり大得意としている近現代音楽のプログラムを聴きたくて後半のプログラムから参加ということなのかなあ。それなら、それはそれで凄いマニア達だ。

で、後半は、プロコフィエフの無伴奏バイオリン・ソナタから始まったのだが、自由闊達、うれしそうに弾いている。そう、そう、元気バイオリン、こういう演奏を聴きたかったのである。なかなかこの曲は、シュタインバッハーの個性にあっており、才気爆発といったところか。

次のシュトラウスの方は、ここでようやくドイツ人らしい、ドイツのシュトラウスという感じの音色を選んできており、特に第二楽章は美しい演奏であった。第三楽章は、いままであまり気がついていなかったのだが、ピアノ・パートは相当に難しいのだろうな。何箇所かミスタッチがあった。そのためか、少し緊張感というか、ハラハラ感が出てきて音楽で表現すべきものが十分に滲みでた演奏になったのはよかった。

ということで、後半は、前半と違って、熱い拍手に包まれていた。

とりあえず、次回も期待できる演奏であった。注文があるとすれば、トッパンホールで演奏するのであれば、シュニトケ、バルトーク、ペルト、シュールホフ、三善晃とか、思い切り近現代曲でやった方が、彼女の個性には合うように感じたし、聴衆のレベルも高いので全然問題なしであろう。


 
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