最近、「ニチオン音叉」で検索してくる方が、急激に増えてきた。調べてみるとテレビの和風総本家という番組で「ニチオン音叉」が取り上げられたことだとわかった。欲しい人も随分いるような気がするが、この世界最高水準の音叉を所有したところで、その使い方がわからなければ意味がないであろう。
音叉は基準音なのであるが、今回のテーマはその先にある正しい音程で演奏できるようにするにはどうするかということである。
さて、 世の中には、2つの方法の音程の取り方があるようだ。
私は、どちらも勉強してきたが、バイオリンの場合は、その両方が必要というのがどうやら結論であるというには、少々、プロセスを無視した乱暴な言い方である。
まず、二つの世界観の特徴を書いてみると、
1. 固定ド(絶対音感の世界)
ほとんどの人はこの方法で音程を取っている。楽譜に音符に書かれた音符の音名をそのまま演奏すれば良いので難しくない。ただし、音楽の意味を全く考えていない音程の取り方であるので、例えば、日本語の歌を外人がその発音のそのままに真似して歌っているような感覚に近い。全く音楽の意味を考えずに歌えるというのが、 固定ドの強みでもあるし、弱みでもある。
さらにバイオリンで演奏する場合の問題点は、バイオリンの音程は異名異音であるということで、このことを知っていないと正しい音程にならないということである。例えば、バイオリンではCisとDesは同じ音程にはならないということである。よくあるのが、EisはF、CesがHになると思っている人もいるようであるが、これは間違った音程感覚である。
※ピアノの場合は、EisはF、CesがHになってしまうが、これが違うと思って弾いている人が弾けば、音楽の表現がまるで違うことになる。伴奏のピアニストならこの弾き違いを意識している。それでこそのプロである。なので、私は本職のソロ・ピアニストよりも、ランバート・オルキスやブルーノ・カニーノ、野平一郎、イリーナ・メジューエワのような伴奏のうまいピアニストを高く評価しているのだ。
2.移動ド(相対音感の世界)
ドの音程が、調によって移動する音符の読み方になるので、固定ドの人からみると異端的で、天動説と地動説のような感じで受け入れできない人が多いが、もともとこの読み方は、由緒正しき西洋音楽の読み方であると説明した場合、驚かれる場合が多い。私の言っていることを信じる必要はないが、以下のサイトに書かれていることは、読んでおいた方が良い。
「中世の移動ド」事始め
移動ドの最高の利点は音楽の意味、例えば、移調する箇所、戻る場所を把握する必要があることから、音楽の意味、つまり楽曲分析をしつつ音符を読むことにある。それとバイオリン的に言うと、固定ドで意識する必要があった異名異音の音程の違いを考える必要がなく、正しい音程で演奏できるということになる。
下記の例だと、移動ドで読む場合のE♯は「シ」となり、主音ドであるFisの導音、すなわちFis-Durであると認識する。そうすれば導音シを高く取り、主音に繋げるということが自然にできる。
※セント値は端数を省略してある。
正確には、
狭い半音: 1200 × log2 (256/243 ) = 90.225 セント
全 音: 1200 × log2 (9/8 ) = 203.910 セント
広い半音: 203.910 - 90.225 =113.685 セント
問題は、相対音程ということなので、初めのドの音を低く取ったり、高く取ったりすると、他のレミファソラシの音程も狂うことになる。そういう意味で基準となる絶対音が必要である。バイオリンの場合は、それが開放弦のG、D、A、Eとなる。
なので、バイオリンの場合、絶対音感、相対音感を超える音感が必要となる。
ということで、ここまで読んでとても退屈であったろうと思うが、面白いのはここからで、私は、もっと実践的に音感を捉えていく。
おそらくプロは30秒くらいで完全に暗譜できると思うが、それには理由がある。
この問題は特に音程が良くなるように暗譜するということを絶対に考えて取り組んで欲しい。スラーやスタッカートを残してあるのはそういう理由があるからだ。イメージ記憶の丸暗記では意味がないのだ。なお、この回答については、このブログにある「拍手」が、今年中に50回を越した時に記載することにする。別に人気取りをする気持ちはないのだが、プロが知る技術を気軽に教えるのは、非常に心苦しい感じがするし、音程に関して真剣に取り組んでいる人にだけ読んで欲しいので、そういう人がどれくらいいるのか、そのおおよその数を把握しておきたいのである。
ということをご了承して頂いて、後の記事は読者次第ということで。
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音叉は基準音なのであるが、今回のテーマはその先にある正しい音程で演奏できるようにするにはどうするかということである。
さて、 世の中には、2つの方法の音程の取り方があるようだ。
1. 固定ド(絶対音感の世界)
2.移動ド(相対音感の世界)
私は、どちらも勉強してきたが、バイオリンの場合は、その両方が必要というのがどうやら結論であるというには、少々、プロセスを無視した乱暴な言い方である。
まず、二つの世界観の特徴を書いてみると、
1. 固定ド(絶対音感の世界)
ほとんどの人はこの方法で音程を取っている。楽譜に音符に書かれた音符の音名をそのまま演奏すれば良いので難しくない。ただし、音楽の意味を全く考えていない音程の取り方であるので、例えば、日本語の歌を外人がその発音のそのままに真似して歌っているような感覚に近い。全く音楽の意味を考えずに歌えるというのが、 固定ドの強みでもあるし、弱みでもある。
さらにバイオリンで演奏する場合の問題点は、バイオリンの音程は異名異音であるということで、このことを知っていないと正しい音程にならないということである。例えば、バイオリンではCisとDesは同じ音程にはならないということである。よくあるのが、EisはF、CesがHになると思っている人もいるようであるが、これは間違った音程感覚である。
※ピアノの場合は、EisはF、CesがHになってしまうが、これが違うと思って弾いている人が弾けば、音楽の表現がまるで違うことになる。伴奏のピアニストならこの弾き違いを意識している。それでこそのプロである。なので、私は本職のソロ・ピアニストよりも、ランバート・オルキスやブルーノ・カニーノ、野平一郎、イリーナ・メジューエワのような伴奏のうまいピアニストを高く評価しているのだ。
2.移動ド(相対音感の世界)
ドの音程が、調によって移動する音符の読み方になるので、固定ドの人からみると異端的で、天動説と地動説のような感じで受け入れできない人が多いが、もともとこの読み方は、由緒正しき西洋音楽の読み方であると説明した場合、驚かれる場合が多い。私の言っていることを信じる必要はないが、以下のサイトに書かれていることは、読んでおいた方が良い。
「中世の移動ド」事始め
移動ドの最高の利点は音楽の意味、例えば、移調する箇所、戻る場所を把握する必要があることから、音楽の意味、つまり楽曲分析をしつつ音符を読むことにある。それとバイオリン的に言うと、固定ドで意識する必要があった異名異音の音程の違いを考える必要がなく、正しい音程で演奏できるということになる。
下記の例だと、移動ドで読む場合のE♯は「シ」となり、主音ドであるFisの導音、すなわちFis-Durであると認識する。そうすれば導音シを高く取り、主音に繋げるということが自然にできる。
※セント値は端数を省略してある。
正確には、
狭い半音: 1200 × log2 (256/243 ) = 90.225 セント
全 音: 1200 × log2 (9/8 ) = 203.910 セント
広い半音: 203.910 - 90.225 =113.685 セント
問題は、相対音程ということなので、初めのドの音を低く取ったり、高く取ったりすると、他のレミファソラシの音程も狂うことになる。そういう意味で基準となる絶対音が必要である。バイオリンの場合は、それが開放弦のG、D、A、Eとなる。
なので、バイオリンの場合、絶対音感、相対音感を超える音感が必要となる。
ということで、ここまで読んでとても退屈であったろうと思うが、面白いのはここからで、私は、もっと実践的に音感を捉えていく。
さて、問題です。以下の楽譜を5分でなるべく音程が正しく取れるように考えて暗譜してください。なお、この曲は、チャイコフスキーの弦楽セレナードの第1バイオリンパートから取ってきたものですが、強弱記号は省いております。
おそらくプロは30秒くらいで完全に暗譜できると思うが、それには理由がある。
この問題は特に音程が良くなるように暗譜するということを絶対に考えて取り組んで欲しい。スラーやスタッカートを残してあるのはそういう理由があるからだ。イメージ記憶の丸暗記では意味がないのだ。なお、この回答については、このブログにある「拍手」が、今年中に50回を越した時に記載することにする。別に人気取りをする気持ちはないのだが、プロが知る技術を気軽に教えるのは、非常に心苦しい感じがするし、音程に関して真剣に取り組んでいる人にだけ読んで欲しいので、そういう人がどれくらいいるのか、そのおおよその数を把握しておきたいのである。
ということをご了承して頂いて、後の記事は読者次第ということで。
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