バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

2016年02月

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

アンサンブルでの音程研究

今回はアンサンブルでの音程のお話し。
 プロオケの先生からは、モーツアルトのときは5度を少し狭くせよという指導が入るのだけれども、実際にどのくらい狭くするのかを数値で示されることはない。あくまでも感覚だ。しかしながら、その数値は一体どのくらいなの知りたいのが人情だ。

ここでくだらん解説をしておくと、弦楽四重奏曲を演奏する場合、バイオリン、ビオラ、チェロが各々純正5度で調弦してしまうと音程的、和声的に都合が悪い。ちょっと計算してみると以下の表のようになる。
 
各調弦のセント値

この表からC音は平均律と比べると6セント広いことがわかる。この6セントがアンサンブルの音程や和声に対し微妙に影響を与える。解決策として、各楽器の5度を狭くする方法もあるし、ピアノと合わせるという手段もある。プロの弦楽四重奏団ではチェロ、ビオラのC音を高めにとって各弦楽器で微妙に調整していくという方法もあるらしい。

で先ほどの話題にもどり、どの程度、5度を狭くすればよいのかだが、古典調律を参考にすると以下のようになる。下の表は、バイオリンを調弦(G-D、D-A、A-E)する場合の5度について記載してある。

各音律の5度

※SCはシントニック・コンマの略(21.5セント)
※ヴェルクマイスターIII調律のA-E間の音程は純正5度である。
 もしかしたらバイオリンの特性に合わせた調律方法なのかも。
※ヴァロッティ/ヤング調律の5度は1/6 PC(ピタゴラス・コンマ)狭くなる。

 練習中のオケ曲はモーツアルトなので、チューニングをヴァロッティ音律に合わせてみたいのだが、純正5度よりも4セント狭めるという技術、つまり調律師のようにビートを数えるというのは、倍音の多い弦楽器では非常に難しい。そこで助っ人としてピーターソンのストロボチューナーを使ってぴったしに合わせてみたところ、G-D間、D-A間の5度はそれほど違和感がないのだが、A-E間の5度は気になるうねりであるが、単体でE音を鳴らしてわかる人はほとんどいないくらいの微妙な音程の狭め方である。

 このヴァロッティ音律でこっそりと調弦し、モーツアルトのハフナー交響曲の練習に挑んでみたが、これがなかなよい感じだ。開放弦のE線を少し低くしてある影響で、開放弦E音を弾くと音程が高いなあと思う部分がことごとく、よい感じになるのと、重音も柔らかく響く感じである。バイオリン単体では確かに響きが悪くなるはずなのだが、楽器の共鳴がずんずんと感じられる。不思議な気分である。

なおヴァロッティ音律は、♭や♯が多くなってくる調になるとピタゴラス音律的に、逆だとミーントーン的になる調律だが、このような差は私の技術では付けられない。あくまでもヴァロッティ音律の5度を使ってピタゴラス的に音程を取りながら演奏しているだけである。

それにしても木管楽器の音律は何になるのだろう。平均律を基準としているとは思うので、平均律の5度に合わせておくのがよいかもしれないが、微妙にコントロールされた音程の取り方をしている。

これは面白い試みなので、どの程度5度を狭めていくのが良いのか研究してみることにする。

●追記

ヴァロッティ&ヤングの5度を録音してみた。微妙なうねりだが、これに気づける人は音楽的に敏感な耳をもっているということなのだろう。
E-Aの5度は耳の近くで聴くとかなりうねっているように思うのだが、 録音ではそれほど気にならないのが不思議である。

 

どうしても合わない運命の和音

本日、オケ練でプロの先生から結構音程のことでしごかれた。

しごかれた箇所は、運命の第一楽章の196小節から227小節。バイオリンは一人一人弾かされる羽目に。As、Cesの音をしっかり取れということだったのだが、ここは絶対合わないと思った。なぜなら、木管楽器の音律と弦楽器の音律がそもそも違うので、どれを基準にするかということで全員のコンセンサスがないからである。先生は、
「くれぐれも注意。Desを低めにとかDisを高めという弾き方ではないぞ! CesはHに同じ。ピアノと同じだ。」
と言っておられたが、「CesはHよりも音程がピタゴラスコンマ分低いのでは〜?」とマニアックにも思ってしまったが、プロの先生はこういうこともわかっておっしゃっているので、思い直してみて、このアドバイスがヒントになっていることを理解。 
 木管楽器は多分わかっているのだが、弦楽器はキョトンという状態である。ここは難しい。木管トップと弦楽器トップがどこで折り合うのか、十分議論した方が良いのだろう。マニアックな音程議論は、さすがに練習で説明することはできない。結論的にいうと弦楽器の音律を木管に合わせるしかないということだが、弦楽器では調弦を純正5度で合わせているので、音律がピアノとおなじ平均律だと思っていても音感がピタゴラス音律的に無意識に音程をとってしまう。特にセカンドバイオリンとかは、フラット系の調の場合は、低めに音程をとるのが基本だと思うのだが、なぜかシャープ系の音程になっているのである。というか、みんなバラバラだ。
 調弦も純正5度ではなく、ちょっと狭めた方が良いのかもしれない。

 本当にこういう部分は、猛練習しても音程は綺麗にとれないのかもしれない。理論的にわかる必要があるのだろうなあ。いろいろな楽器が入るオーケストラ特有の音程の取り方の難しさがある。こんなの説明するのは、かなり難しい。

ということで、教育目的で、こんなのを作ってみたのだが、いつものように趣味に走ってしまって教育を逸脱してしまった。しかしながら、これはこれで面白いかもしれないので、興味のある方は、聴いてみてほしい。

運命の様々な音律を使って

純正律、ピタゴラス音律、1/4、1/6、1/7 シントニック・ミーントーンで遊んでみたのであった。
ベートーヴェン時代に使われていたというキルンベルガー音律やヴェルクマイスター音律とヤング音律とかでも作っているので、ご要望しだいということで、「拍手ボタン」を押してもらえれば、適当に増えたところで、続きを作ってみることにする。

それにしても今の状況は、純正律やピタゴラス音律で運命を演奏したような感じなのかな???
本来、正しい音律のはずが、合奏になると悲惨なことになるのは、政府の政策とも似て教訓になる事項である。


書籍の危機

最近、薄々感じているのが音楽関係の専門書の販売期間がかなり短くなってきているのではないかということである。それと内容の薄い解説書が多く、本格的な専門書が出版されなくなっているという傾向。このためなるべく良い本は購入を急ぐ必要があり、迷ったら購入するという方向でいく方針にしておく必要があると思う。

特に、東川先生の以下の書籍が、重版未定とはどういうことなのか。

読譜力 伝統的な「移動ド」教育システムに学ぶ

この事実に驚愕して、しばらく行方不明になっている以下の書籍を買いなおした。
この本こそが、弦楽器の聖典ともいえるべき本である。
クリスティーネヘマン著
弦楽器のイントネーション
この本は、アマゾンでみると、12,164円(中古価格)とあるのだが、定価で3,780円。聖典がおいてある店を知っていたので急ぎ買いにいくと一冊しかなかったので、即購入しておいた。たぶん、銀座ヤマハ店にはもうないであろう。数か月前には、3冊くらいおいてあり、池袋店にもあったはずなのだが、もはやなし。

また、以下の聖典も最近は見ていないが、もしかしたら廃版?こちらも見つけたら2冊目を即購入の予定。
バイオリン運指法
ヤンポリスキー著 ; 現岡幹博訳
アカデミア・ミュージック
それにしても、どこかの知識をコピペした本はよく出版されるのだが、本格的な内容の本は絶滅の危機にさらされているような感じだ。漫画なんかを入れるスペースがあったら文字をかけと言いたい気もする。

そういえば、東川先生の以下の書籍は、細かい文字でびっしりと埋まっていた。東京文化会館資料室で閲覧してみて感動。先生がこの後で出版したソルフェージュ系の著作で書いてあるようなことは、この本で網羅されているので、是非とも復刊させてほしい。
東川 清一 著作
退け、暗き影「固定ド」よ!―ソルミゼーション研究
ついでに、以下の資料室の著作を読んでみたのだが、恐ろしく凄く内容が濃い。おそらく普通の教室では教えてもらえないことが随分と書いてある。さすがに日本最高のバイオリン教師一人であるだけのことをあると思った。これが廃版とは、あまりにももったいない。
鷲見三郎著作
ヴァイオリンのおけいこ / 久保田良作 [ほか] 編 
音楽之友社

他、貴重な書籍がたくさん。それにしても、昔は随分と素晴らしい先生が、本物の知識を伝える著作を残してくれているのだが、ほとんどが廃版。私なんかは、東京文化会館資料室は近いところにあるので、随分と助かっているのだが、地方の人はどうしているのだろうか。

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