今回はアンサンブルでの音程のお話し。
プロオケの先生からは、モーツアルトのときは5度を少し狭くせよという指導が入るのだけれども、実際にどのくらい狭くするのかを数値で示されることはない。あくまでも感覚だ。しかしながら、その数値は一体どのくらいなの知りたいのが人情だ。
プロオケの先生からは、モーツアルトのときは5度を少し狭くせよという指導が入るのだけれども、実際にどのくらい狭くするのかを数値で示されることはない。あくまでも感覚だ。しかしながら、その数値は一体どのくらいなの知りたいのが人情だ。
ここでくだらん解説をしておくと、弦楽四重奏曲を演奏する場合、バイオリン、ビオラ、チェロが各々純正5度で調弦してしまうと音程的、和声的に都合が悪い。ちょっと計算してみると以下の表のようになる。
この表からC音は平均律と比べると6セント広いことがわかる。この6セントがアンサンブルの音程や和声に対し微妙に影響を与える。解決策として、各楽器の5度を狭くする方法もあるし、ピアノと合わせるという手段もある。プロの弦楽四重奏団ではチェロ、ビオラのC音を高めにとって各弦楽器で微妙に調整していくという方法もあるらしい。
で先ほどの話題にもどり、どの程度、5度を狭くすればよいのかだが、古典調律を参考にすると以下のようになる。下の表は、バイオリンを調弦(G-D、D-A、A-E)する場合の5度について記載してある。
※SCはシントニック・コンマの略(21.5セント)
※ヴェルクマイスターIII調律のA-E間の音程は純正5度である。
もしかしたらバイオリンの特性に合わせた調律方法なのかも。※ヴァロッティ/ヤング調律の5度は1/6 PC(ピタゴラス・コンマ)狭くなる。
練習中のオケ曲はモーツアルトなので、チューニングをヴァロッティ音律に合わせてみたいのだが、純正5度よりも4セント狭めるという技術、つまり調律師のようにビートを数えるというのは、倍音の多い弦楽器では非常に難しい。そこで助っ人としてピーターソンのストロボチューナーを使ってぴったしに合わせてみたところ、G-D間、D-A間の5度はそれほど違和感がないのだが、A-E間の5度は気になるうねりであるが、単体でE音を鳴らしてわかる人はほとんどいないくらいの微妙な音程の狭め方である。
このヴァロッティ音律でこっそりと調弦し、モーツアルトのハフナー交響曲の練習に挑んでみたが、これがなかなよい感じだ。開放弦のE線を少し低くしてある影響で、開放弦E音を弾くと音程が高いなあと思う部分がことごとく、よい感じになるのと、重音も柔らかく響く感じである。バイオリン単体では確かに響きが悪くなるはずなのだが、楽器の共鳴がずんずんと感じられる。不思議な気分である。
なおヴァロッティ音律は、♭や♯が多くなってくる調になるとピタゴラス音律的に、逆だとミーントーン的になる調律だが、このような差は私の技術では付けられない。あくまでもヴァロッティ音律の5度を使ってピタゴラス的に音程を取りながら演奏しているだけである。
それにしても木管楽器の音律は何になるのだろう。平均律を基準としているとは思うので、平均律の5度に合わせておくのがよいかもしれないが、微妙にコントロールされた音程の取り方をしている。
これは面白い試みなので、どの程度5度を狭めていくのが良いのか研究してみることにする。
●追記
ヴァロッティ&ヤングの5度を録音してみた。微妙なうねりだが、これに気づける人は音楽的に敏感な耳をもっているということなのだろう。
E-Aの5度は耳の近くで聴くとかなりうねっているように思うのだが、 録音ではそれほど気にならないのが不思議である。