今年も弦楽器フェアに行ってきた。
今回はビオラを中心にみてきた。手工ビオラの場合は、ほとんどサイズが40.5cm以上であったが、42cmくらいなら何とか弾けるかなあという感触を得た。教訓は、こうしたサイズよりも各製作者の工夫ということで、かなり弾きやすいビオラもあった。大抵はそういうビオラは指板が狭めで、ネックの厚みも薄く、重さも軽く作られている。肝心の音はやはりバイオリンと一緒で反応の良い楽器ということかなあ。自分ではビオラはうまく弾けないので今回は、演奏会の方に力を入れて精密に聴いてみた。
幸運なことに今回の演奏者である田原綾子さんとお話することができたので、演奏上のことでいろいろ聞いてみた。特に気になっていたのがボーイングなのだが、バロックボーの持ち方をしていたので、これはなぜかと尋ねてみたところ、腕が短いのでそういう弾き方をしており特に古楽奏法ということではないとのこと。確かに42cmを超えるような大きな楽器では、左腕だけではなく右腕も長さが必要なのだろう。
演奏の方は、これだけ多種多様なビオラをたくさん弾くのは大変なことのようである。
次にビオラの選定について、どのビオラが良いとか悪いとかはおっしゃっていなかったが、聴いている話のなかで大体わかった。今回のビオラの難曲である、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラソナタと西村朗の超絶難曲の『C線のマントラ』が選曲されていたが、そうした曲を演奏するにはプロの要求する演奏技術に追随する反応の良い楽器ということになるだろう。それを1時間くらいで、各製作者のビオラにあった曲を選定しているということは、プロの直感であるはず。なので、おのずと解は推定できる。
これを判断材料にして、演奏家で演奏されたビオラを中心に試奏してみることにした。
C線の反応が鈍いのは、あたりまえのように感じていたのだが優れた楽器はそれをカバーするような工夫がされており、なるほどと思った。それにしても製作者が魂が燃える楽器というのがビオラなのかもしれないね。
制作者の高橋さんに今回のビオラのことを尋ねてみたところ、「今回のヒンデミットで良い結果になっていたことはとてもびっくりした。私のビオラはアルトよりに制作していたので、音がごちゃごちゃせず、濁らなかったのがよかったのだろう」と語っておられた。
こちらは荒井さんのビオラ。とにかく弦の長さにこだわりあり。ネック等もいろいろな演奏者の意見を取り入れて作ったとのこと。テールピースに工夫がありC線を長くとっているところが面白い。私なんかのようなバイオリン弾きでもかなり弾きやすいビオラであった。