バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

催し

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

弦楽器フェア2019

今年も弦楽器フェアに行ってきた。

今回はビオラを中心にみてきた。手工ビオラの場合は、ほとんどサイズが40.5cm以上であったが、42cmくらいなら何とか弾けるかなあという感触を得た。教訓は、こうしたサイズよりも各製作者の工夫ということで、かなり弾きやすいビオラもあった。大抵はそういうビオラは指板が狭めで、ネックの厚みも薄く、重さも軽く作られている。肝心の音はやはりバイオリンと一緒で反応の良い楽器ということかなあ。自分ではビオラはうまく弾けないので今回は、演奏会の方に力を入れて精密に聴いてみた。

幸運なことに今回の演奏者である田原綾子さんとお話することができたので、演奏上のことでいろいろ聞いてみた。特に気になっていたのがボーイングなのだが、バロックボーの持ち方をしていたので、これはなぜかと尋ねてみたところ、腕が短いのでそういう弾き方をしており特に古楽奏法ということではないとのこと。確かに42cmを超えるような大きな楽器では、左腕だけではなく右腕も長さが必要なのだろう。

演奏の方は、これだけ多種多様なビオラをたくさん弾くのは大変なことのようである。

次にビオラの選定について、どのビオラが良いとか悪いとかはおっしゃっていなかったが、聴いている話のなかで大体わかった。今回のビオラの難曲である、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラソナタと西村朗の超絶難曲の『C線のマントラ』が選曲されていたが、そうした曲を演奏するにはプロの要求する演奏技術に追随する反応の良い楽器ということになるだろう。それを1時間くらいで、各製作者のビオラにあった曲を選定しているということは、プロの直感であるはず。なので、おのずと解は推定できる。

これを判断材料にして、演奏家で演奏されたビオラを中心に試奏してみることにした。
C線の反応が鈍いのは、あたりまえのように感じていたのだが優れた楽器はそれをカバーするような工夫がされており、なるほどと思った。それにしても製作者が魂が燃える楽器というのがビオラなのかもしれないね。


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制作者の高橋さんに今回のビオラのことを尋ねてみたところ、「今回のヒンデミットで良い結果になっていたことはとてもびっくりした。私のビオラはアルトよりに制作していたので、音がごちゃごちゃせず、濁らなかったのがよかったのだろう」と語っておられた。

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こちらは荒井さんのビオラ。とにかく弦の長さにこだわりあり。ネック等もいろいろな演奏者の意見を取り入れて作ったとのこと。テールピースに工夫がありC線を長くとっているところが面白い。私なんかのようなバイオリン弾きでもかなり弾きやすいビオラであった。


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今回、面白かったのがベルナルド・サバティエ、マルタン・ロリさんの変形ビオラ。この楽器の売りはハイポジションが楽に弾けるというものだが、田原さんが珍しく弾きにくそうにしていたので、尋ねてみたところ楽器の形が原因とのこと。確かにこれでは初見では弾けない。楽器のバランスが随分と違うのである。
小さいビオラは分数サイズとのこと。
ロリさん曰く、フランスでは和という文字はハーモニーという意味になるので、パリ在住の日本人書道家に入れてもらったらしい。

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弦楽器フェア2018

弦楽器フェア2018に行ってきた。

バイオリンに関しては、どの製作者もレベルが高いものが多かった。楽器はとにかく大きな音が鳴り響く、ピアニシモでも遠くに届くこと、そうしたニーズをかなえる楽器も何台かあった。特によかったと思うのが、オリバー・ラトケさんの作品かな。このレベルの作品だとコンクールで使っても上位を狙えるという感じ。随分とオールド楽器との差が縮まった気がする。ただ価格は少し高めかな。良い楽器でかつ価格が安いものは日本人作家のものを選ぶのがよいかも。百瀬 裕明さんの作品なんか、よく鳴っていてコスパがかなり良い感じ。若い作家の人を狙うというのもよいかも。
 
オリバーラトケ2

実はビオラがかなりよかった。各弦のバランスがよく、C線のダブダブ感も良い感じの楽器であった。ビオラは楽器選びが難しいのだけれども、ラトケさんの作品の音色は文句なしという出来具合。

百瀬裕明

今や人気制作家の菊田さんのバイオリンの半額で購入できるのがよい。百瀬さんの方は、製作者としてこれからさらに腕が上がってくるだろうなあ。この価格は今のうちかもしれない。


秘密兵器の登場。

以前紹介しておいたこれね。これを使ってコンクールで優勝した方がおられるとか。今回は新バージョンが出ており、溝の切り方が変更になっている。たずねてみたところ、和音の響がよくなるとのこと。課題はこれにベストフィットする肩当てを制作することかなあ。カーボン素材でつくればおそらく弦楽器業界に革命が起こるインパクトはある。使用するときには、くれぐれも首のストレッチをお忘れなく。

KaNaDe1


肩こり体操

 他、小物類で面白いと思ったのが、「hamberger soundpost」というアタッチメント式の魂柱で以下の動画あり。魂柱の軸の部分は弓と同じ素材のフェルナンブコとのこと。マニアックな方は使ってみてはどうかと思うが、私は怖くて無理だなあ。



これも面白い。東洋楽器から発売されてい楽譜ケース。シェル型の楽器ケースにしばりつけることができるので、自転車で移動するときに便利であるということで、割引き価格にて早速購入した。

楽譜用バック2
楽譜バック1

 楽譜バック3

楽譜を余裕で格納でき、ペンシルを入れが2個ついている。 これは便利。オーケストラの人はほしいんじゃないかな。

バイオリンケースはロッコーマン社の新作が若草色で良い感じ。1.8Kgらしい。楽譜入れは狭い。オーケストラの楽譜を入れるにはサイズが足りないが、上記の楽譜ケースを購入すれば解決。

ロッコーマン

追記:
 イタリア水害の記事あり。世界的に手工バイオリンの価格が上がるかもね。

バイオリンの森、壊滅的被害 暴風雨「復旧に200年」

 イタリア北部のオーストリア国境に近いドロミテ地方にある「バイオリンの森」が、10月29日から続いた暴風雨の影響で壊滅的な被害を受けた。この地域のトウヒの木は、1丁数億円で取引されるバイオリンの名器ストラディバリウスにも使われた。地元の林業技術の専門家は、元の森に戻るには「200年かかる」と指摘している。

 伊紙レプブリカによると、森がうみ出す良質な木材は、弦楽器やピアノの響板に広く使われてきた。北部クレモナで17〜18世紀に弦楽器製作を手がけたストラディバリ父子も、この森の木材を使ったとされる。

 だが、風速30メートル以上の暴風が吹き荒れた結果、150万立方メートルの木が幅約200メートルにわたってなぎ倒され、壊滅的状態に陥った。

ミュシャの熱い魂

本日、六本木の国立新美術館で開催されているミュシャ展に行ってきた。

ミュシャと言えば、よくドビュッシー、ラヴェル先生のCDのジャケットに使われる有名な画家なのであるが、個人的にそれ以上の興味はなかった。画家というよりもデザイナーであると思っていたのであるが、たまたまテレビでミュシャ展の解説をやっていたスラヴ叙事詩の作品群がとても気になって行くことにしたのだゾ。

正直、かなり驚いた。こんなに超巨大な作品群を人生の晩年に描ける圧倒的なパワーに驚愕。すごく重厚、すごく意味深、すごい構図、すごい瞳、すごい視線、すごい色彩感覚、すごい白のパワー、すごい矛盾、すごい真実。

ヴォドニャヌイ近郊の


音楽でゆうならば、ショスタコーヴィッチの巨大交響曲という感じだ。第4番あり、第8番あり、第7番あり、第11番あり、第12番あり、第13番あり、第14番あり、こうした曲を一気に聴くような感じだ。凄まじい。絵画におけるビックバンである。
これは、すでに単なるアール・デコのデザイナー屋が描くレベルを超えている。覚醒者として何かが見えていてそれを描いている、人間を超えたレベルの存在に描かされている感じだ。

特に各人物の視線がすごい。ほとんどの人が神や王を将軍をみている最中にまったくその真逆の方向に赤ん坊を抱えた女性がいたり、下を向いて疲れた人がリアルに描かれている。

これは、まさにショスタコーヴィッチの音楽の世界。権力に媚びる者と、権力に弾圧される者たちの神なき世界である。もしかしたらショスタコーヴィッチもこのスラヴ叙事詩を見たことがあるのかなあ。

このミュシャもナチスの弾圧によってゲシュタポ送りになる凄まじい人生。

これだけのスケールの美術展覧会は空前にして絶後、これを逃したらもう二度とみることはできないであろうから、見に行って正解であった。ミュシャにも相当興味をもったので、今後調べていくことにする。

●東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン
 こちらは交響曲第4番の世界
   

●ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛
 こちらは交響曲第11番第2楽章の世界(21:00あたりから)
 そして第3楽章の無の世界(30:00あたりから)。
 
   

●グルンヴァルトの戦いの後
●ヴェートコフ山の戦い後
 こちらは交響曲第8番の世界
 

ヴォルニャイ近郊のペトル・ヘルチツキー
 こちらは弦楽四重奏曲第2番、第2楽章 嘆きのカンタービレ

 
 
●ロシアの農奴制廃止
 こちらは交響曲第12番の世界
 あるいは交響曲第4番最終楽章の世界。希望のはずが。。。
 

●スラヴ民族の参加
 こちらは、オラトリオ森の歌かな。
 
 








音律マニア必見、分割鍵盤

チェンバリストの山縣万理さんからメールが届いた。分割鍵盤による演奏会を開催しますとのこと。
これは、私の方から連絡をお願いしていた件で、1年ぶりに実現ということになる。

分割鍵盤とは、1オクターブを15分割、16分割、19分割した鍵盤のことであり、ヘンデルも愛用したとのことである。分割する理由は、当時の主流であったミーントーン調律で発生する広い五度を解消するためである。広い五度は音程的に激しい不協和音になるため、広い五度が発生する曲では使えなかったのである。これを解消するには鍵盤を増やしてしまうということで、B(ベー)とAisの音程、GisとAs、DisとEsにそれぞれ違った高さの音を割り当てることによって曲を弾けるようにしたのである。

難しく書いてしまったが、要するに皆さんの大好きな『純正三度』をより的確に表現でする手段の一つが分割鍵盤である。ただし、演奏が難しくなることもあって今日では廃れってしまったとのこと。これに挑戦する人は、古楽が流行している21世紀になってもなかなか出てこなかったのだが、ようやく挑戦者が出てきた。それが山縣万理さんである。

鍵盤楽器の「制約」を乗り越えて、追い求めます!

とのこと。

今まで聴いたことがない音楽。楽器の制約により真の意味で今まで正しく演奏されてこなかった曲が聴けます。幸せのハーモーニー。それが今回のコンサートの狙いになる。音律マニアは必見でございましょうということで紹介しておきました。私も聴きにいきます。
 
●分割鍵盤の解説
 
鍵盤楽器の挑戦は続く(山縣さんのブログから)

●コンサートのお知らせ


弦楽器フェア番外編

先日に続いて、また弦楽器フェアに行ってきた。

お目当はこれなのだよ。


魔法のアジャスター


お姉さん曰く

「本日、限定価格、いつもは4万円のところを3万円。どうですか?」

「素材はなんですか?」

「企業秘密です。」

怪しすぎる。バイオリンのアジャスターは普通は3千円もしないものだが、その10倍。能書きは、
楽器の残響を極限にまで引き伸ばしバイオリン&ビオラを軽々と鳴らしてしまうレスキュー的に使われてきた「魔法のアジャスター」なんです。

「プロは使っているのですか?」

「はい、松田理奈さんが使っています。」

「昨日も1個売れました。」

とのこと。こういう急所をついてくる殺し文句を聞いていると、お宝探偵団によく出てくる骨董屋に騙されるオヤジの気持ちがよくわかる。

うーん。迷う。ただ、まだ4個あるし、こんなの買うのはよっぽどのバイオリン馬鹿に違いないので大丈夫であろう。家へ帰って調べてからでも遅くあるまいと考え、ここは一旦引き上げた。

家へ帰って、ネットで調べてみたら高評価であったのでさらに迷う。買わなかった場合、後悔する方の確率が高いであろうということで、密かに購入を決意。

で、翌日に行ってみると、なんと残り2個になっていた。さすがにバイオリン馬鹿はいるものだ。これはいかんだろうと思いつつも、迷ったふりをしていると、

昨日のお姉さんがでてきて、

「そんなに迷うなら、バイオリンにつけてみましょうか?」

ということだったので、展示品のバイオリンにつけてもらった。

で驚いたのだが、e線だけでなくa線の音も綺麗に伸びて音の輝きが違う。音量も多少増している感じがする。

ここで決断。即購入。

家へ帰って、早速取り付け。アジャスタの取り付けにはちょっと手間どったが、その出来栄えはなかなかのもので、音の曇りがなくなり1ランク上のバイオリンになった気がする。さて、この3万円が高いのか安いのか、難しいところではあるが、不思議なアジャスターであることは間違いないであろう。

我ながらバイオリン馬鹿である。

魔法のアジャスター2

正確な名前は、Biturbo(ツィンターボ)というのかなあ。


 

弦楽器フェア2016

今年も弦楽器フェアに行ってきた。

毎年、来ているので声をかけられることもあり、少々恥ずかしい。

今年は、弓を購入して満足してしまったので、バイオリンの方を中心に見てきた。
バイオリン選びは、弓選びよりも楽だと思っていたのだが、やはり先にあるものがまだまだ見えていなかったというか、聴こえてなかったのかもしれないと反省。

ちなみにクレーメルさんのインタビューにこのようなものがある。

 音楽ファンは演奏家がステージで演奏するときや、できあがった録音で演奏を楽しんでいるよね。でも、アーティストがどうやってそのステージまでたどり着いたか、どうやって録音を作り上げたかには目を向けない。ぼくは太陽と同時に月も大切だと思うんだ。裏側の影の部分だよ。楽譜から読み取ったものをどう実際の音にして聴衆の席に届けるか。どれだけ裏で血のにじむような努力をしているか。それを少しでも知ってほしい。自分の仕事をまっとうするために多くの犠牲を払っていることも。ぼくが自分の仕事である音楽に忠実であろうとすると、莫大なエネルギーが必要となる。だからプライヴェートな時間はまったくなくなってしまう。その状況を聴衆が知ることによって偽物と本物、まねごとと真の解釈との差が理解できるようになると思う。そしたらみんなもっと音楽を楽しめるでしょう。

このアーティストをバイオリン職人に置き換えると、まさにこんな感じ。バイオリン職人のアライさんとお話しをしているとその様々なこだわりを感じることができた。彼は、バイオリンの発音、特に出だしの Zi という発音にすごくこだわって制作されておられる。
 私の先生もこの Zi という発音がとても重要ということを言っておられた。ただ、奏法上の話でありバイオリンにそれを求めるのは違うのかなあと思っていた。でも最近、わかってきたのだが、バッハの無伴奏バイオリンの重音の多い曲だと、 Zi という発音ができる楽器かどうかは、その音のキレを立ち上がりを決める重要なファクターであるのだが、そこまでの実力がないと楽器の能力は引き出せない。楽器が人を選ぶというのはそういことなのだろうな。

でそういう視点で、楽器をみていったのだが、 Zi という発音ができる楽器はごくわずかしかない。そのほとんどが、1930年以前につくられているオールド楽器である。ただ、数千万円をこえるようなものばかりで、それに新作で挑戦するのは先ほどのクレーメルさんのインタビュー記事のような感じなのだろう。

それにして、平然と数千万円の楽器が陳列され、自由に試奏させてもらえるのがこのフェアのすごいところなのだけれども。

ビジャッキ

オールドバイオリン


アライさんのブースでは、3台のバイオリンが展示されていた。私はこの Zi という発音ができる楽器を一発であてることができた。どうやらこの楽器がアライさんの自信作らしい。価格も従来よりも良い素材をそろえたということで150万とのこと。

arai 3vn


他は、Lourenzo Rosshiさんのバイオリンの新作で、これも Zi という発音ができる楽器で出来栄えが素晴らしかった。こちらは200ユーロとのことで、チャンピオンならではの価格である。


lorenzo Rossi


とまあ、適当には書いてあるが、会場が結構うるさいので、Zi 音を出せる楽器を見逃しているものと想定しておいてほしい。Zi 音はごく小さな音なのである。
 

演奏会のご案内

そろそろ案内をしておくべきことなのだが、杉並公会堂で11月29日の演奏会にファースト・バイオリンで出演する予定。曲目は、以下の3曲。

J.S.バッハ :レスピーギ 3つのコラール
ブルッフ :ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ブラームス:交響曲第4番ホ短調

※チケットは以下の招待状をもっていけば無料です。
http://bunpaku.com/img/syoutai30.pdf

最初の曲は、バッハのオルガン曲からレスピーギがオーケストラに編曲した作品。第一曲は、結構いろいろな楽器で編曲されており、トランペットとか、サクソフォンとか楽器ごとに味があって面白いので、演奏を聴いて興味をもって頂けたなら聴いてみるとよい。

第二曲はバッハのコラールで優れた作品が多い中で、レスピーギが何故、この曲を選んだのか謎。非常に短いし、セカンド・バイオリンは全休である。

第三曲は、ソフトバンクのCMにも使われていた『目覚めよと呼びわたる物見の声』である。最初、このCMを見た時に、なんと意味深な曲を使うんだと、CMの選曲者は、「してやったり」とほくそ笑んでいる顔が浮かぶようであった。

ブルッフのバイオリン協奏曲第1番は今回の目玉かな。濃厚なロマン派の曲を東京交響楽団の坂井みどり先生をソリストにお迎えしての演奏することになっている。
今年は、コンクールのお付き合いもあり、この曲を随分と聴いていた。驚くべきことは、今時の音高生、高校生とかは、この曲をノーミスで軽々と機械的に精密に弾きこなす。でもそれは、コンクールミュージックに過ぎず、バイオリン大道芸としての魅力は全く無い。観客をいかに楽しくさせるかが、この曲の真骨頂であるし、聴かせどころであるので、そのような演奏を目指したいものである。

メインは、ブラームスの交響曲第四番。秋にふさわしい選曲である。この交響曲は、中学時代に最も良く聴いていた曲であり、高校入学試験で『あなたが大切にしているもの』というテーマの設問で、生意気にもカラヤン=ベルリン・フィルとベーム・ウィーンフィルの演奏比較をしつつその素晴らしさについて字数制限一杯に解説しつつ書いていたものであった。

当時は、カラヤン=ベルリン・フィル、カール・ベーム=ウィーンフィルの全盛期であり来日もしており、FM放送はエアチェックしたカセットテープを擦り切れるくらいに聴いていた。当時は、第2楽章はあまり聴いていなかったのであるが、いざ演奏してみると、ホルンとピチカートの前半が終わり、中間部にいったときの弦楽合奏の部分は、凄くロマンチックで、夜空を恋人と一緒に眺めているような美しさがある。
シンドイのが、第三楽章と第四楽章で、指揮者は「カルロス・クライバーを目指す」と言っておられ、アマチュアではありえないエゲツナイ速度で弾くように指示しているので、ほとんどついて行っていないが、後で録音したものを聴くと、なんかごちゃごちゃしているが、太筆で一気に書いた『書』のように、ゴツゴツした質感のようなものは感じられた。とはいえ、もっと練習しておかないとなあと思っている。

ということで宣伝終了。

以下は、参考音源です。











弦楽器フェア2015

2週間前くらいから「弦楽器フェア」で検索してくる方が随分と増えてきた。これはいつものことなのであるが、突然「笹野 弓」で検索してくる方が随分と増えており、なんでかなあと不思議に思っていたのだが、弦楽器フェアに行ってきてその謎が解けた、笹野さんがJAL会員誌の「アゴラ」に掲載されていたからなのである。

我れら地球人

なるほどね。今回は、笹野さんとお話しする機会はなかったが、いつもの通り無駄のないすっきりとしたデザインとバランスのよい弓であった。

笹野弓

他、弓で有名な方として、河辺恵一さんの弓もおいてあった。バイオリン弓の方は2本あり、1本は随分と前に重心があり、いつもとバランスが違うので驚いたが、あえて挑戦してみたとのことであった。河辺さんはお話し好きな方なので、いろいろと弓のことを尋ねてみた。やはり弓の良し悪しの基準については、私の見解とも一致しており、間違ったことは書いていなかったのだとホッとする。
 他、ビオラ弓は角弓、バイオリン弓は丸弓なのであるが、どういう基準で丸にするのか、角にするのか、フェルナンブコの板の価格なども尋ねてみた。

河辺弓2

河辺弓1


今回もトルテ、サルトリー、ペカット、ラミー、マリンなどのオールド弓が、たくさん展示してあった。こうした普段は触れることができない、数千万円クラスの弓で弾かせてもらえるのもこの展示会の醍醐味である。

バイオリンの方は、やはり何と言ってもアライさんのバイオリンだ。今回はプロ奏者の松田里奈さんの試奏会での演奏もあったが、やはりこのアライ・バイオリンの音は、世界的レベルと思うしかない。オールドバイオリンに唯一対抗できるほどの音色の良さであったので感動した。
下の写真では真ん中のバイオリンが試奏されたのだが、右側のバイオリンも相当によいストラディバリを感じさせる音色であり、個人的はこちらの方が好みかもしれない。新作バイオリンでなかなかこの音は出せないので、このバイオリンで130万円という随分と安いとも思ったのであった。

アライバイオリン


他、珍しいバイオリンとして、ストラドの装飾バイオリン、ビオラ、チェロの展示があった。なかなか美しいバイオリンでパワーもあり好感度高し。このバイオリンは単体では販売せずとのことで、カルテットのセットで1千万円とのこと。装飾付きの弦楽器が4丁セットでこれならかなり安い価格であろう。とはいえ個人で購入できる人はかなり裕福な人だと思う。


装飾バイオリン

装飾チェロ

装飾バイオリン2


ほか、素晴らしいオールドが随分とおいてあったが、このバイオリンの音は古い気品のある音とパワーで随分と気に入った。

オールドバイオリン


ほか、小物の方へ目を向けると、こんな新型の肩当がピアストロから発売されていた。素材はメープルで、たくさんの穴があいており軽量化を図っている。最近は、肩当なしで弾いているのだが、この肩当なら抵抗感がないかもしれない。しかしながら、肩当で2万円というのは、すごい価格だなあと思ったしだいである。

肩当


バイオリンケースで結構よいものを見つけた。重さは1.8Kgの軽量ケース(ポーランド製)であるのだが、工夫がいっぱいされている。まず写真の真ん中の肩当がみえると思うが、これをこういう感じで、抑えるようになっているのが秀逸。これは持ったときに、揺れてもバイオリンにあたらないのと、カチャカチャと音しないように工夫されている。
また、乾燥を防ぐための簡易加湿器をくぼみの部分にあたるところの場所にはめ込むようにして装着。これは、見たことがないがよい工夫だと思った。
ほか、譜面入れも工夫されていて収納しやすいし、価格も3万8千円程度と手軽である。おすすめかも。バイオリン・リサーチ社が取り扱っているのだが、この製品の紹介サイトがないのが不思議。


バイオリンケース


加湿器

この緑色の物体にこの液剤を染み込ませ、黒いフォルダに取り付け、以下のように装着する。

バイオリン加湿器


新作弦の方は、低価格帯のアルファユーが新発売となったようだ。感じはドミナントに似ている気がする。まあ新作弦を発表するのはよいのだが高級弦だとなかなか。安い価格でよいものを作ってほしいところである。そう意味では、アルファユーがドミナントに代わる弦となるのであればうれしいものである。


アルフィーユ











 

三味線とパガニーニ その2

さて、前回の続き。

 小屋に人だかりができていたので、見てみると何やら、津軽三味線のミニコンサートがあるとのことで、面白そうだから観ることにした。 しばらくすると一人の若い男性が出てきた。山中信人さんという演奏者だ。山中さんはかなり童顔なので、本当はそれなりのお年らしい。と失礼なことを書くのも何なので、プロフィールを調べてみると、洗足学園音楽大学の先生とのこと。最近、縁があるなあこの大学。

山中信人

 それはさておき、まずは、何曲か演奏されたあとで、三味線の解説があった。三味線は3オクターブの音域があり、西洋楽器とも合わせることができるとのこと。撥は、シャモジでも演奏もできるとのことで、実際に演奏してくれた。それなりに良い音なので、笑いと「ほ~」という関心が混ざったような聴衆の反応であった。 次に自作曲の風林火山という激しい曲を演奏してくれたのであるが、西洋と和が合体したようなサウンドと、パガニーニ的超絶技法で、実に面白かった。 三味線とバイオリンで共通する奏法は、

・左手のピチカート
・重音奏法


  特に三味線は左手のピチカートを多用するので、どことなくパガニーニぽく聴こえることもある。 重音奏法は、これは多分、三味線の伝統的な奏法ではなく西洋のそれと思える。少し違和感を感じるものの6度の響きが斬新に聴こえる。本来なら音程を微妙にずらしたオクターブ重音が伝統的な奏法なのだろう。

 調弦は、後で調べてみたのだが、本調子(音名:D─G─D)というのと、二上り(音名:D─A─D)というのがあるらしい。二上りだと、バイオリンの調弦とよく似た感じになる。D─A─Eにすれば、バイオリン弾きなら演奏できるかも。 三味線の場合は、曲の途中で調弦を変更する場合がよくあるが、バイオリンの場合は、シュニトケのモーツァルト・ア・ラ・ハイドンという曲で、途中調弦を変更するというパフォーマンスがあるが、これは稀。



※この動画で、10分後に面白いことが発生する。

 続いて、似たような感じであるが、基本的に奏法が違うもの。

●バルトーク・ピチカート
●スル・ポンティチェロ
●ポルタメント・グリサンド
●スコルダトゥーラ


  三味線には、バルトーク・ピチカートという奏法はないが、撥で弦を弾くので似たようなサウンドになる。バイオリンもこの三味線のような撥で弾くというのも新しい奏法として有りかもしれない。

  スル・ポンティチェロも三味線にはないが、撥で弦を擦る奏法が頻発するので、こちらも似た雰囲気になる。

 ポルタメント・グリサンドはどちらの楽器も可能であるが、バイオリンは論理的にかけているのに対し、三味線は、人の感情にそってかけている点が違うように思う。

・スコルダトゥーラ そもそも三味線の調弦がスコルダトゥーラである。西洋ではビーバーのロザリとのソナタで有名であり16世紀から17世紀ごろスコルダトゥーラによる調弦が多かったようなのだが、今では稀である。

 スコルダトゥーラは、ギターやリュートではよく使う。声楽に楽器をあわせる目的で色々と試行されてきたのではないかと思う。そういえば、思い出したが、ハルダンゲル・ヴァイオリンという北欧の民族楽器は、このスコルダトゥーラで調弦された共鳴弦が哀愁をもって響く。 



 三味線には、おそらくバイオリンでいうところのビブラートはないと思うが、かけることは可能であり、特に重音奏法でかけてみると面白いかもしれない。

 「はいや!」「ほいよ!」という掛け声は、日本の伝統的音楽ではよくあるが、西洋音楽でほとんどない。これは結構使えるのではないかと思うので、作曲家は参考になると思う。そういえば、超天才コパティンスカヤはすでにこの奏法を取り入れているか。



楽器揺らし奏法は、三味線を弾き終わったときに、楽器を子供のように抱えながら揺らすというもので、たまにロック・ギターなんかではやることはある。なかなか味のある音になるので感心したが、バイオリンでやるとかっこ悪いかなあ。

 ということで、バイオリン視点から三味線を聴かせてもらったのであった。それにしても日本人である私が、西洋の楽器であるバイオリンの方をよく知っているというのも、なんとなく気まずいような違和感があることであるものよ。

2014年の弦楽器フェア

2014年の弦楽器フェアに行ってきた。
毎年、楽しみにしているが今回、気になったものを書き出してみる。

まずは、アライさんのバイオリン。今回は、ストラドの1704年作“ベッツ”のコピー。アライさんは、いつもながら研究熱心であり、演奏者が要求する音の好みによくこたえ、今回のバイオリンも素晴らしい仕上がりであった。ちょうど、コンサートで二村英仁の演奏でこのバイオリンが演奏されたのだが、弱音であってもホールの奥まできっちりと音が届いており、 よく響くよいバイオリンと思った。130万円ということであったが、感覚的に海外の有名作家の300万円相当を遥かに上回る音の鳴り方をしている。

あらいベイツたち

あらいベイツ裏板


※バイオリンの写真の色合いは、赤であるがもう少し黄色ぽい。

ドイツの場合、ストラドなどの歴史的名器を製作家を支援するために貸し出すことがあるそうなのだが、こういった凄腕の製作家達に、研究のために貸し出すことなどが、国としてできたら、すごい弦楽器製作大国になると確信している。 

次に、江畑さんところにバロック・バイオリンもおいてあったので 、弾かせて頂いた。裸ガット弦が張ってあり、バロック・ボーで演奏してみたのだが、軽い感じでなかなか弾きやすかったし、音も美しく、よい楽器のように思えた。バロック・バイオリンはいつか手に入れたいと思っている。

バロックバイオリン

 あと、日頃、なかなか弾く機会がない、オールド・バイオリンを弾かせてもらえるのもありがたいのだが、やはり1800年代のバイオリンは、乾いた木の響く感覚が素晴らしい。新作では、でない音なのでついほしくなるが、800万とか、1000万とか手が出せないので、この感覚を覚えておくよいチャンスである。

オールドバイオリン1

ビヨーム

掘り出しもののオールドなんかを狙うというのもあるが、師匠曰く、昔はそういった楽器がたくさんあったらしいのだが、今はほとんどないので、楽器店めぐりはあまりしなくなったらしい。

その中で、おもしろい装飾バイオリンがおいてあったので弾いてみたところ、結構よくなっている感じがした。80万円ということで、お値打ちかな。

装飾バイオリン

弓の方は、これといったピ〜ンとくる弓はなかった。材料のフェルナンブコのよいものが枯渇してきているのであろう。新作弓の場合は、楽器店においてあるものを購入するより職人さんに直接依頼して製作してもらった方が、やすく上がると思う。
オールド弓の場合は、130万〜200万くらいでよいのがあるのだが、 気に入ったら購入しておかないと、すぐに売れてしまうのである。

※備考
 偶然、以下の動画を発見。よい弓について語れる人は、プロ奏者でも、楽器職人、楽器商、教師達でもほとんどいないなかで、ここまで明快に語れるのは、少々感動。さすが佐々木さんである。参考になったので掲載。ただ、云われていることの他に、選ぶポイントがあるとは思うが、なかなか言葉にできないのが、弓選びの難しさだ。この理論でいくと、もしかしたらカーボン弓が最高なるのかなあ。年々カーボン弓の性能アップがされてきているし、フェルナンブコの良い木がなくなってきているので近々、逆転してもおかしくないかも。

他は、新作弦。いつも感心するのは、毎年毎年、新製品を出してくること。
今回は、カプラン社からヴィボとアモ、トマスティック社からラカトシュという弦がでていたので試奏してみた。 カプラン社の方は弦に個性がある。ラカトシュはジプシーバイオリンの名手がパッケージになっているが、オーソドックスな弦の感じがした。
いずれも、機会があれば、試してみることにする。

カプランヴィヴォ


カプランアモ

ラカとしゅ

 
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