バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

クラマジラン

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

ゴルゴ・鞍馬寺さん

本日、鞍馬寺蘭(クラマジラン)のリサイタルへ行ってきた。行く前にどのくらい鞍馬寺さんが期待されているのか、ちょっと見てみるかとグーグルで検索してみたところ、こんな緊急速報が!!

2014年5月30日(金) 19:00開演
会場:トッパンホール
出演:ヴァイオリン:ファニー・クラマジラン ピアノ:広瀬悦子 ※

※当初予定していたヴァニヤ・コーエンが今朝体調不良のためドクターストップがかかり、広瀬悦子にピアニストを変更して開催します 。
「え〜!、今日ですか!!」

と驚いてみせたのものの、こんな時、プロはいつもの10倍以上に張り切って演奏することはお約束と言ってよく、長年のクラシックファーンならわかっており、ある意味とてもワクワクして 会場に行ったのであった。もしかしたら、イザイの無伴奏に変更か!!と脳内は、すでにアドレナリンが湧き水のようにわきあがるのであった。

 このようなことは、よくあることで、近年では、あの東日本大震災があったときに、ピアニストが来日できないにもかかわらず 強行来日したテツラフ。プログラムも大胆にも変更。バッハ無伴奏の人知を超えた神がかり的な演奏をしたのを思い出す。

 で、会場に行ってみると、変更されたのは、以下の2曲で、 

ブルーノ・マントヴァーニ:ハッピー・アワーズ
サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第二番 変ホ長調 Op.102
 
 こちらに変更になった。
 
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第一番 イ長調 Op.13

まあ、曲としては、フォーレの方が良いのでよいが、ハッピー・アワーズが聴けなかったのが少し残念。
いよいよ本題の演奏の方だが、

 本日の鞍馬寺さんは、濃青色に透かしが入っているかのような上品なドレスであった。ピアニストさんは、黒でいろいろと模様が入ったドレス。背丈は、広瀬さんの方が鞍馬寺さんよりも高い。鞍馬寺さんは、フランス人なのだが小柄で、雰囲気はかなり日本的である。

 コツコツと弓を弦にあてるようなチューニングですぐに演奏に入る。ここでポイントがあるのだが、このようなチューニングをする方は、プロでも最上級の演奏をする方のみである。 

 まずは、プーランクから、この曲は正直いってバイオリン曲としては、あまりよい曲とは思っていなかったのだが、鞍馬寺さんの演奏にかかると、細かなパッセージが一つ一つ浮き出ては、消えていくような演奏で、かなりアーティキュレーションを細かく再現していることがわかる。初期のころは、こうした演奏がやや神経質的な感じがしていたのだが、最近は場数をずいぶんとこなしているので余裕がみえる。その結果、演奏がおおらかになって自然だ。この奏法はイザベル・ファースト級であるといって良いであろう。

 次に武満だが、武満を外人が演奏すると、着物を着た背の高いおねえさんを見ているような違和感があるのが普通なのだが、鞍馬寺さんは、フランス人にして日本人という感覚があるのか、実に自然に演奏している。武満の曲と、プーランクがこんなに近い距離にあったのかと少々驚きと戸惑いがあった。

 ついでドビュッシー。前の2曲以上に精密なダイナミックスをつけて演奏しており、なんか日本の伝統工芸品をみているかのような、和の匠を感じた。本当にフランス人なのか?この人はと三度思う。

 休憩を挟んで、フォーレは、本日はほとんど練習する時間がなかったはずなのだが、これも見事に演奏していた。このクラスのプロになると、本番が練習という感覚なのだろうなあと思う。まさにやり直しがきかない墨絵のごとくの繊細さだ。そしてこの演奏が、本日の最高できであったように思う。

 アンコールは、以下の2曲であったのだが、

カロル・ベッファ 「バッハの書法による」
プロコフィエフ 「5つのメロディより第一曲」
 
 カロル・ベッファのこの曲は、鞍馬寺さんのためにあるような繊細で技巧的な曲。新作なのに伝統を感じさせる。

ということで、ベタ褒めしておいたのだが、本当は、急遽当日にピアニストを引き受けてくださった広瀬さんに大きく感謝である。この人のおかげで、鞍馬寺さんは安心して演奏に打ち込むことができたのであろう。もう鞍馬寺さんの専属ピアニストということで良い気がする。

※このブログのタイトルにつけた「ゴルゴ」は実は広瀬さんのことです。

さて、鞍馬寺さんは、おそらく今後は、イザベル・ファーストのあとをつぐような存在になっていくであろうと思われる。今現在、フランスものを演奏させたらもはや敵なしという感じの貫禄がでてきた。そうなるとトッパンホールのような小さなホールでの演奏が減ってしまうので、今しばらくは、人気が今くらいでいてほしいとも思う。本物のクラシック音楽というのがわかる人にのみ聴いてほしいソリストである。

次は、この人である。天才中の天才、そのハチャメチャに期待である。

2014-05-30 09-10-54 +0900


 

イザイのかたりべ

本日、トッパンホールにファニー・クラマジランのリサイタルに行ってきた。

ホールは、ほぼ満席であり、意外に有名だったのだなあと感心。東京のバイオリン好きは、層がかなり厚い。頼もしいかぎりである。

「バイオリンの音はコンサートで聴くべし。CDからは何もわからない」

という論があるが、私もまった
くその通りだと思う。
マンゼ、テツラフ、カルミニョーラ、ヒラリー・ハーン、ムローヴァ、イザベル・ファウストなどキラ星のごとくそろっている現役世代のレベルの高さ、クレメール、ムター、ギルシャハムなども近年ますます磨きがかかっているし、こうした演奏家を生で聴けるのだから、今や黄金期ではないかとすら思ってたりする。そうそう、バロック界のスター、レイチェル・ポジャーももうすぐ来日するしね。

そんな、強者ヒシメク、バイオリン界で、新人バイオリニストが 、名乗りを上げて生き残っていくのは大変なことなんだろうと思う。そんななかでクラマジランのこの集客力はかなり大したものだ。

 さて出来栄えの方だが、今回の演奏を聴いて、それだけのことはあると納得。

定評のあるイザイだが、実にいい感じの演奏であった。まず素晴らしいと思ったのが、フレーズとフレーズを対比させながら丁寧に、少し間をもたせたりしながら弾いていたこと。演奏しているというよりも語っていると感じだ。ミルシティンのバッハや、イザベル・ファウストの得意とする表現だが、これらとも少し違う感じ。より高貴なお方が語っている感じのするイザイ。

それと微妙な弓さばきで生まれる、音色での水墨画のような表現。このにじみ具合が実にいいのだ。

イザイでよく出てくるドビュッシー的な部分。6度の連続重音だが、クラマジランは、絶妙な弓使いで音を溶かしていた。たぶん、駒の位置をコントロールしながらアップボーとダウンボーで音色を切り替えるくらいの芸当をやっていたように思う。


ysai


他、サーンサーンスの方は、こうした弾き方を変更し、かなり駒よりにフォーカスした弓さばき。おそらくこれくらいの音量が出せているのならコンチェルトでも心配ではないであろう。多彩な弓さばきとその美しさは素晴らしい。

あと、気になるところがあるとすれば、魅力となるビブラート表現を武器としてさらに強化してほしい。これは上記で述べたS級バイオリニストなら必ずもっている表現なのだが、武器と呼べるまでには、まだ時間がかかるのかもしれない。ムター、クレメール、イザベル・ファウストなどのクラスになると、思わず息を飲むくらいの表現をここぞというところでだせますからね。

●追記
 クラマジランという名前は、私には結構覚えにくい名前であった。クラマラジンとか勝手に脳内変換している場合もある。対策として漢字にしてみると記憶できるようになった。『鞍馬路蘭
。これで誤変換しなくなった。

 業界では、「骨太の妖精」とかのキャッチフレーズだが、これは聴いたイメージとも、体のスタイルとも全然一致しない。どっかの政党のキャッチフレーズみたいで嫌味な感じである。

私がつけるなら『イザイのかたりべ』である。

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