バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

ザウター

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

バイオリンが選ぶピアノ選び6

バイオリニストが好きなピアノの音色と、ピアニストが選ぶ音色はまったく違う。

バイオリニストだけでなくおそらく他の弦楽器もそうであろうが、スタインウェイを中心とする現代ピアノの音色は、弦楽器にまったくマッチしていない。 特に、ベートーヴェンのバイオリン・ソナタでは、バイオリンとピアノが乖離して聴こえてしまう。そういうことを考えているときに、ピーター・ゼルキンのお持ち込みピアノによるコンサートの件で、様々な感想があり面白い。

特にサントリーホールで聴いた人の不満が多くあり、トッパンホールでは好評の人が多かった点。

ホールによって随分と違ってくるのがピアノの評価。サントリーホールというのは、名門ホールではあるが、残響が長いので、音がぶよぶよで音の密度が薄くなる傾向がある。こうしたアリーナ式形状の大ホールの場合、鋼鉄のような強い響きのピアノが良く生えると思う。なので最新のスタインウェイとかヤマハのフルコンだと良い感じになるのだろう。

とはいえ、ゼルキンが持ち込みしたピアノもスタインウェイではある。古いピアノであることと古典調律を使っている点が違う。よく古楽愛好家による古典調律論と調律師を中心とする平均律論は、ネット上で対立しており、双方の論に共に面白いものがあるのだが、アリーナ式形状の大ホールの場合、古典調律の場合は、音が残響に溶け込み過ぎてしまい、迫力がないとかの評価が優勢なのかもしれない。

逆にトッパンホールのような小ホールで、サントリーホールにあるような平均律で調律されたフルコンで演奏されてしまうと耳が痛い。古典調律での柔らかい三度と、粒立ちがはっきりしているが柔らかな音のピアノだと、ホールでうっとりとさせられてしまう。

適材適所というか、ホールによってピアノのサイズや調律法も変更すべきなのだろう。

プロのリサイタルでは、バイオリンと演奏するピアノは、いつもフルコンだが、小型のグランド・ピアノやアップライトでも良いのではないか思う。たぶん、そのような楽器を使った場合、音量的にもバランスがとれ、より溶け合う響きになると思う
ただ、そうならないのが、固定観念なのかなあ。フルコンが1軍で、フルコンでないグランド・ピアノが練習用、アップライト・ピアノは2軍といった感じ。国産の有名どころのピアノ・メーカーもそういう系列でラインアップしているからである。

最近、そういうラインアップの方法が間違いであろうということが、優れたヨーロッパピアノを試弾して結果わかってきた。アップライトは、グランドピアノの2軍ではないということ。またアップライト・ピアノもそのサイズが大型のものが、良いかというと必ずしもそうならず、小さいサイズのものにも魅力のある音のするピアノがたくさんあることである。残念ながら、国産はほとんど駄目な感じ。2軍はでしゃばっては駄目だと言わんばかりの作りだからである。まあ、一部ディアパッソンのピアノで良い音色のものもあったが、傾向としてはそんな感じだ。

ペトロフとザウターはグランド・ピアノとアップライトではまったく違う方向性の音作りを目指しており、好感がもてる。

ということで、最近は、ペトロフとザウターのアップライトピアノで購入を考えようかなあと思っている。特にペトロフは、白銀台のお店で随分と良いものがあり、ピアノの個性も1台1台、異なっており、バイオリンを選定するようなワクワク感があるのである。この御店の店長は、もともとスタインウェイを手がけていた会社から独立した調律師さんで、本物のピアノを音というのを追求しているらしく、古今東西のピアニストにかなり詳しい。しかもグレン・グールドのピアノ調律方法についても言及してくれた。すっかり意気投合し、2時間ずっとお話しがはずんだのであった。

バイオリンが選ぶピアノ選び1

デジタルピアノの不調もあり、休暇中にピアノを見にいってみた。まあ、最初は50万円くらいの予算で良いのがあれば、それと最新のハイブリッド・ピアノも気になっているので、それもみておくかということで、まずは、池袋のヤマハにいってきた。

このお店には、アヴァン・グランドの全種類がおいてある。それを全部、試弾させてもらった。
N1,N2,N3はすべて同じ音源で、スピーカー・システムが違うと説明を受けたのだが、全然音が異なって聞こえるの面白い。N2がとても明るい音色で、N1がマイルド、N3が標準的な感じかなあという感じうけた。鍵盤に関しても、N2が適度な軽さをもつ鍵盤で弾きやすい感じがしたし、どれも今のグランタッチの感じとよく似ている。驚いたのが、ピアノの音量の強弱、MIDI用語でいうところのヴェロシティの変化が自然な感じであり、特にピアニシモでの表現は、本物のグランド・ピアノよりも表現しやすいことである。例としては、トリルでppからffからクレッシェンドやデクレッシェンドをかけてみるとわかりやすい。グランドピアノではこのピアニシモは表現できない。逆に、叩きつけるような強烈なスフォルツァンド系の音は、デジタル・ピアノでは表現不能である。

それにしてもデジタル・ピアノといえどもここまで表現できるようになっていることに驚いた。
こうした特徴をもつので、デジタル・ピアノで弾いているととても上手く演奏できているかのように思えるのだが、グランド・ピアノだともっと繊細なので、こういう特徴をどう考えるかということが、選ぶ人によっては重要なのだろう。たぶん、大人になってからピアノを始める人には、とても良い選択肢なのかもしれない。逆に子供は、生楽器を弾いておいた方がよいのかもしれない。

あと、Nuの方は、こちらはアップライトの鍵盤ということで、生ピアノと比べても遜色ないし、出音がヤマハ最高クラスのデジタル・ピアノをサンプリングしているということもあり、N1,N2,N3よりも音が良いと思える人もいるだろう。値段設定としては、この価格のつけ方はよいかもしれない。でもN1,N2,N3は、この価格なら本物のピアノを購入できるので、さあいかなるものかと思うのである。

ということで、次に池袋にある中古ピアノの専門店へいってきた。このお店は、かなり数のピアノが置いてあり、ヤマハのUX30も8台くらい置いてあるのには驚いた。このシリーズは譜面台が非常に大きいので譜面を書いたり、オーケストラのスコア譜面を置くのには便利だという理由である。
さて、全部試弾させていただいたのが、若干ノイズ混ざるピアノもあったのだが、どれもこれも同じヤマハの音であったのは驚いた。これはバイオリン以上に選定が難しい。バイオリン弾きの立場からいうとこのヤマハの音というのは、弦楽器とは相性が悪いというか調和しない音に感じるのである。とても購入する気がしなかった。本当にピアノってこんなに個性がない楽器なのかと疑問を呈しながら店を出た。ある意味、まったく無個性というのがヤマハの製造技術の高さ、つまりどのピアノを選択しても問題ないという工業生産品としてのピアノの姿なのかもしれない。

次に新宿の島村楽器へ行ってきた。最近、このお店はすごく中古ピアノに力をいれているらしい。品揃えも結構良い選択しているように思えた。ただ、やっぱりヤマハの音はヤマハであるのだなあと感心しつつも、もう少し個性のあるピアノはないかという感じを感じたのか、店員さんがそれならということで、奥の部屋に案内してくれた。そこにあったのが、ザウターというドイツ製のピアノ(UP114Premiere)であった。
試弾してみると、音の粒立ちがプリプリしており、響きも今までのピアノとは全然違う。弦楽器のもつ最高級の木の響きをもつピアノであると感じたので、そのことを女性の店員さんに告げると、そうことがわかる人ならと思ったのかどうか知らないが、調律師&技術士さんを連れてきてくれて、そのピアノの中を惜しげもなくみせてくれたのであった。

その裸になった美しいピアノ姿をみて、「ああ〜やはり〜そうだよね」と直感でわかったが、オール手作りであり、鍵盤に使われている素材は、バイオリンの表板で使われている西洋松であったのであった。鍵盤の機構も実にスムーズで優雅であり、これがプリプリ感を演出しているのであろう。まあ、価格だけみてしまうと155万円ということで高いように思えるかもしれないが、この丁寧な仕事ぶり、ドイツですべてが製作されていることを考えるととてもやすいとも言える。

恥ずかしながら、このザウターは頭の中には、まったくなかったのだが、もしかしたら弦楽器にあう最高のピアノの一台なのかもしれないぞというワクワク感がある良いサウンドのピアノとも思ったのであった。

ザウターの中身

ザウター社は、調律師&技術士さんのお話によると、創業190年の世界最古のピアノのメーカーであり、あのベートーヴェンともゆかりのあるとのことであった。マイスターの伝統のあるドイツ魂と日本の職人魂というのは共通するものが多いように思う。

それにしても、ひさかたぶりに本物木の音のするピアノに巡り会えたことは嬉しくおもう。
ちょっと、海外のピアノにも興味が湧いてきたので、次回はこの続きを書いてみる。





 
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