本日、トッパンホールにて、ペーター・ツィンマーマンのリサイタルに行ってきた。

2013/10/6(日) 15:00開演
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン) / エンリコ・パーチェ(ピアノ)

J.S.バッハ: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 全6曲
第1番 ロ短調 BWV1014/第2番 イ長調 BWV1015/第3番 ホ長調 BWV1016/
第4番 ハ短調 BWV1017/第5番 ヘ短調 BWV1018/第6番 ト長調 BWV1019

 ツィンマーマンのトッパンホールでの演奏会は何回か流れているので期待度が上がっており、当然のごとく本日は満席であった。全曲演奏という偉業でもあるし、期待度が大きくそれなりにうまい演奏をしたので、相当大きな拍手で、観客の皆さんはとても満足していたと思う。
でも、私は、つまらない演奏だと思った。その理由が漠然とせず、3時間くらいモヤモヤと考えていたのだが、例えていうなら、設計図のあるプラモデルをマニアな人にお願いして作ってもらったのだが、確かに設計図通りで正確で丁寧に作られているのであるが、 予想でおりで感動がないという感じであろうか。私の脳内では、凄腕のマニアさんが作った艦船模型くらいのできは期待していたのであった。

あのツィンマーマンならこのくらいはやるであろうという期待が大きすぎたのかもしれない。

では、どこに不満があったのであろうか。私は、このバッハの曲集に関しては、リファレンスが脳内にある。あのアンドリュー・マンゼとエガーの演奏である。この演奏が、まさしく上記の凄腕マニア的演奏である。だから、並のバイオリニストでは退屈してしまうのである。ツィンマーマンが並では駄目だろうという理屈なのである。

なぜ、並の演奏になってしまったのか、ツィンマーマンという人は、丁寧に音楽を作っていくタイプのバイオリニストであり、作曲家の言わんとすることを、丁寧に汲み取って演奏するタイプである。でも、マンゼの場合は、バッハと積極的に会話したい、何かを聞き出してやりたい、言わせてみようとするタイプの演奏家である。そして相棒のエガーがそれをみてどんどんと挑発していくスタイルの演奏をするので、聴いていて予測できない部分があり面白い。ハラハラするのである。

今回の場合、ピアニストであるエンリコ・パーチェが、おとなしすぎて、本来は挑発に乗ってくるタイプのツィンマーマンの真の実力を引出せていないように感じた。もともとこの曲集は、バイオリニストが付属であり、チェンバロが主役の楽曲なのである。それが、あまりにもおとなしすぎたため、曲本来の面白さが台無しになっているのである。

なので、凡作である1番、2番は、「ああ凡作ですね」と言う感じでしか聴こえずとても眠かった。マンゼ&エガーは、この曲ですら傑作であるように聴こえる演奏をしている。正直、ツィンマーマン&パーチェの演奏である程度の満足できたのは、3番と6番のソナタのみである。全体的に工夫と楽譜の読み込みが浅いように感じてしまう。

結論的には、ツィンマーマンは、バッハにあまり向いていないように感じた。マンゼは別格としても、イザベル・ファウスト、テツラフ、ムローヴァ、クレーメル達の最先端をいくバッハ演奏の次元とは、ほど遠い。次回は得意分野である20世紀以降に作品に焦点をあてたプログラムを望みたいところである。