バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

レクイエム

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

様々な奇跡の果てに

本日は、非常に不思議な日であった。

まずは、山手線の事故。秋葉原~神田駅間の線路内で架線を支える柱が倒れたため、山手線・池袋~東京~田町駅間と京浜東北根岸線・東十条~品川駅間は運転を見合わせとのこと。

この日は、東京文化会館でオーケストラの練習があったのであるが、上野駅に直接いけず、仕方がないので大江戸線で迂回し上野御徒町から歩いて、東京文化会館へいく。20分遅刻。でもほとんどの人が、遅刻したので、開始は9:30からとなった。

練習が終了したのが、12時。この時点でも山手線は止まったまま。練習は、地下のリハーサルルームであったのだが、休憩室のビデオをみてみると、何やら合唱付きの凄いオーケストラ編成の曲をプロオケが練習している。このとき団員の人が、

「ステージ上でティンパニが横にずらずら並んでいるよ。凄すぎる!」

と驚きの声。私もその光景をみて驚いたのであるが、

「これってもしかしたらあの伝説のベルリオーズのレクイエムじゃないの。」

どうやらそうらしい。オケは都響とのこと。これを一緒にみていた女性団員の方が

「これ、私、絶対に観る。」

と興奮しながら語ったので、お昼ご飯をご一緒したあとに、一緒に観に行くことにした。
このときもしも、京浜東北線が動いていたら、そのまま私は帰っていたかもしれない。

この曲に関しては、文献ではいろいろ知っていたのであるが、実際には聴いたことがなかった。

それで、当日券待ちで並んだのであるがS席しかなかった。1万円と300円だったかな。それで少し、どうしようかということになって迷っておられるようだったので、

「この曲は、演奏機会が極めて稀なので一生に一度聴けるかどうかの曲だよ。
そもそも演奏会を聴き逃して後悔することはあるが、お金がどうのこうので後悔したことはないであろう。」

と背中を押してあげたところ、それじゃあと行くということになった。
でも、チケット販売間際になって、何とB席が少数であるが、販売されることになり、それを運よくゲットすることができた。そもそも東京文化会館は通常のS席よりは、たまたまゲットできたこちらのB席の方が音響的にも断然よいのである。ラッキーであった。

で1時間30分くらいの大曲が終わったときに、その女性が何やら肩を叩いてくる。後ろを振り向くと、なんと小泉元総理大臣が、観客席のど真ん中に立ち上がって熱烈な拍手をしているのであった。

つい最近も皇后美智子様が来ているコンサートへ行ったし、お二方ともに、クラシック音楽が大好きなのだなあと思った次第であった。

今回、こうした珍しい曲にもかかわらず、満席になっているし、東京のクラシック音楽愛好家のレベルの高さというのは、世界的にも相当なものなのだろう。

さて、曲の感想はというと、この曲については初めて聴いたようなものなので、詳しくは書けないが、関心したのは、以下のような事柄かな。

ティンパニが16台。

その効果は音量的なものではなく和声的なもの。弱音で和音を叩くところが多い。相当なこだわりがベルリオーズにあったのだろう。それに、ティンパニ奏者はたえず舞台上でチューニングをしていたところを見ると、かなりの難曲なのだろうなあ。

都響らしからぬ和声の美しさ。

こうした大編成の曲では、音程がぐちゃぐちゃになりがちなのであるが、合唱団とオーケストラがきっちりと合っていた。濁りのない純正律の美しさである。特に音の小さな部分も丁寧に音程が合わされていた。さすがに都内No.1オケと言われることだけのことはある。都響のイメージはもう少し荒いという感じがあったのだが、最近のこのレベルは凄い。
さらに驚愕したのが、舞台袖のトランペットとトローンボーンであるが、舞台から遠い距離にあっても、きっちりと音程が合っているというのも驚異的。

やはり、日本のオケはもはや世界的なレベルなのだろう。

また、この曲が魅力的なところがたくさんあるが、演奏機会に恵まれない要因としては、バッハのマタイ受難曲や、モーツァルトのレクイエムとかにある、魅力的なアリアの少なさや、歌手陣の二重奏、三重奏的にスリリングに複雑に絡んでくるような作りにはなっていないので、その点では、物足りない気がするのである。

まあ、無きゃ無いでそれも魅力なのかもしれないが、いかんせん私がこの曲を聴きこんでいないので、そのように通俗的に思うのかもしれない。

面白いと思った部分は、オーストラの伴奏部分で、あまり聴きなれないような斬新な響きがところどころに聴かれた点。当時のベルリオーズは若者であったはずだが、この時代を超越した生意気な天才性を感じさせるものがあり、こうした響きが後期ロマン派の礎になっているのがよく分かる。

ということで、非常に貴重な体験をさせてもらった次第であった。

日時    4月12日(日) 15:00開演(14:00開場)
曲目    ベルリオーズ:「レクイエム」死者のための大ミサ曲 op.5
指揮    大野和士
出演    ロバート・ディーン・スミス(T)
演奏    東京都交響楽団
合唱    東京オペラシンガーズ
合唱指揮    レナート・バルサドンナ、宮松重紀


BCJ詣出

BCJを聴きに彩の国さいたまホールへ行ってきた。

モーツァルト:証聖者の荘厳な晩課(ヴェスペレ) ハ長調 KV 339
モーツァルト:レクイエム ニ短調 KV 626

鈴木雅明(指揮)
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
櫻田 亮(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱・管弦楽)

BCJコンサート


 彩の国さいたまホールは、600人規模の中ホールであるが、とても音響が良い。響き過ぎず、乾き過ぎずこのくらいの編成のオーケストラを聴くのはちょうど良いホールである。座席スペースもゆとりがあるし、座り心地もよい。何よりも客席に段差があるので、前の人に邪魔されずに集中して聴けるものよい。今回は、2階席に興味があったので、その中央2列目に席を取る事にした。

埼玉彩のホール

2階席


さて、演奏の方なのだが、 
バッハ・コレギウム・ジャパンは、日本が誇る世界最高峰の古楽オーケストラなのでいつ聴いても安心して聴ける。固定客も多く、他の演奏会にはない独特の雰囲気が観客席からも感じることができる。私の座っていた席には、ドイツ人と思われる西洋人の客も3人ほどいたというのも驚いたのであるが、始終静寂で、曲間でも咳すらしない聴くことに集中した姿勢、観客の方も、クラシック音楽を極めた方々が集まる最高峰の聴衆だ。
今回、モーツアルトの演奏である。モーツアルトを単独で聴きにいくことが、最近、ちょっと増えて来たように思う。
昔のモーツアルト演奏は、ビブラートをかけまっくてやたらと甘ったるく、ヴィナーコーヒーのクリーム山盛りで、砂糖が10杯くらい入っている演奏ばかりであったので、自然と聴くのを拒否していたのだろうと思う。カルミニョーラの今このときに音楽が生まれてくるような凄いモーツアルトを聴いていらい、興味が湧いてきたのであった。それと最近は、ありがたいことに古楽的演奏が、バッハ、ハイドン、モーツアルトの世界では常識となり、作曲家の音楽的意図がはっきりとわかるようになってきたのも大きなことだと思う。

そんなこんなで、古楽演奏の聖地を求めてBCJを聴く事としたのである。

まず、一曲目は「
証聖者の荘厳な晩課」であった。この曲に関しては、今回初めて聴く曲であったのだが、面白い響きだ。荘厳な晩課の正体は、グレゴリオ聖歌であったのだ。古い教会の音楽とモーツアルト音楽の合体した曲が、この曲になる。何か聴いていると、16世紀と21世紀をいったり来たりしているような感覚になる。曲がタイムスリップしているのである。
モーツアルトには、弦楽四重奏曲の「不協和音」の冒頭のように、たまに驚くようなことをやってくれるが、この曲もその一つであろう。こんな曲も書いていたのだと結構驚いてしまったのであった。

2曲目は、有名曲の
レクイエムである。恥ずかしながら生演奏で聴いたのは、初めてであったのであるが、オーケストレーション的に意外であったのが、ホルン、オーボエ、フルートが入っておらず、かわりにトロンボーンが、アルト、テナー、バスと三本が揃っていたことである。バセット・ホルンについては、この曲が使われることを知っていたのだが、クラリネットが入っていなかったことも驚いた。CDで聴いているとこういうことはあまり意識しないことなのである。

それにしても、トロンボーンの三重奏が素晴らしい。こんな効果が出せるのであれば、他の交響曲でも積極的に使えばよかったのに、もったいないと思ったくらいである。モーツアルトが長生きしてベートーヴェンの第五交響曲を聴いたとしたら、彼ならもっと面白い効果を考えついたのかもしれないとつい思ってしまう。

曲の方は、BCJ故に何も言う事はなし。モーツアルトの音楽が、そこにあると言う感じで、クラシック演奏という範疇を超えて、ある意味、神を詣出に神社に行っているようなものである。神社に行く人で神社を批評するような人がいないように、批評することが野暮である。
キャロリン・サンプソンの美しい歌声を聴いていると、聴けるだけでありがたいと感じてしまう。贅沢を言い出すと、男性合唱団の素晴らしい音量の前に、女性合唱の音量が少しもの足りないと感じたことくらいであるが、これとても季節が変われば景色も変わる程度の感想である。

ということで、来年の4月に開催される「マタイ受難曲」のチケットも
無意識に予約していたのであった。 


 
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