バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

暗譜

『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

ドティラソ暗譜法

クラシック音楽サイトの掲示板には、よく以下のような挑戦状が書かれることがある。

『ミュージシャンAの方が、作曲家ωの方よりも天才だと思いませんか?』

そのミュージシャンAの楽曲を選曲したフィギュアスケーターが本番で転んでしまったのはご愛嬌でしかないが、敬愛する作曲家ωは、基本的に『ドティラソ』で曲を書いている。

それにしても、『ドティラソ』
ふ~む。『ドティラソ』
『ドティラソ、ドティラソ』

あれ?
あれ?あれ?
あれ?あれ?あれ?

なんか閃いてきたぞ。

以前、セキュリティについての講習会で、暗証番号は他人はわかりにくいが、自分にとっては覚えやすいものでないといけないと説明された。例が以下である。
【暗証番号の例】
$FUJISANHA$3776MDESU

これは、「富士山は3776メートルです」という短文を暗証番号にして、適当に$マークなどを挿入しておくというものである。これだと文字数の多い暗証番号になるし、英数字以外の文字列を挿入することにより、より安全で類推されにくく覚えやすい暗証番号になるとのことだった。

さて、このことをヒントに上記の質問を少しマニアックにアレンジしてみた。

作曲家ωはこの『ドティラソ』という便利な暗証番号を使って様々の楽曲を作っている。天才ミュージシャンAが血みどろの努力や感性を総動員して楽曲を生み出しているのに、それよりも遥かに才能が劣る作曲家ωはこれだけの暗証番号で、数百曲を作曲して、堂々と300年以上存在し続けているのである。実にけしからん話である。

書いている最中に、ある暗譜方法を考えつくことができた。作曲家ωの作曲技法を逆手にとる暗譜法『ドティラソ暗譜法』である。

さて、さて、暗譜といえば、うんざりしておられる方が多いと思われる。私も苦手であるが、師匠からは暗譜が得意と思われているが、単純な暗記は苦手である。たぶん、その差は、音楽を理解して覚えようとしているかどうかにあると思う。

このドティラソ暗譜法を使って暗譜する試みをやってみる。演習曲は作曲家ωの有名なメロディである。

【演習1】
以下の楽曲の階名で書かれたメロディを暗譜せよ。
調性はD-durで4拍子。固定ドの人は音名D Cis H A で考えれば良い。

│ド  ティ ラ ソ│

⇒ 簡単ね。

【演習2】
演習1を2倍の長さにした次の楽曲のメロディを暗譜せよ。

│  ド   ティ│      ソ│ 
│ド   ティ  │ラ ラ ソ  │


⇒ ド、ティ、ソの音がオクターブ跳躍しているだけ。

【演習3】
演習2のリズムを変更した次の楽曲のメロディを暗譜せよ。

 
│     │ド─ ─  │ ティ    │    │ ソ        │
│ド─ ─ ─│    ド│ティ (休)ティ│ララララ│ソ (休)(休)│

⇒ なんか見えてきたかな?
  
【演習4】

リズムを暗譜せよ。

 リズム


演習5
 
楽曲を暗譜し、曲名を当てよ。

オーボエ


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バイオリン音感

最近、「ニチオン音叉」で検索してくる方が、急激に増えてきた。調べてみるとテレビの和風総本家という番組で「ニチオン音叉」が取り上げられたことだとわかった。欲しい人も随分いるような気がするが、この世界最高水準の音叉を所有したところで、その使い方がわからなければ意味がないであろう。
音叉は基準音なのであるが、今回のテーマはその先にある正しい音程で演奏できるようにするにはどうするかということである。

ニチオン


さて、 世の中には、2つの方法の音程の取り方があるようだ。

1.  固定ド(絶対音感の世界)
2.移動ド(相対音感の世界)

私は、どちらも勉強してきたが、バイオリンの場合は、その両方が必要というのがどうやら結論であるというには、少々、プロセスを無視した乱暴な言い方である。

まず、二つの世界観の特徴を書いてみると、

 1.  固定ド(絶対音感の世界)

ほとんどの人はこの方法で音程を取っている。楽譜に音符に書かれた音符の音名をそのまま演奏すれば良いので難しくない。ただし、音楽の意味を全く考えていない音程の取り方であるので、例えば、日本語の歌を外人がその発音のそのままに真似して歌っているような感覚に近い。全く音楽の意味を考えずに歌えるというのが、 固定ドの強みでもあるし、弱みでもある。
 さらにバイオリンで演奏する場合の問題点は、バイオリンの音程は異名異音であるということで、このことを知っていないと正しい音程にならないということである。例えば、バイオリンではCisとDesは同じ音程にはならないということである。よくあるのが、EisはF、CesがHになると思っている人もいるようであるが、これは間違った音程感覚である。

異名異音

※ピアノの場合は、EisはF、CesがHになってしまうが、これが違うと思って弾いている人が弾けば、音楽の表現がまるで違うことになる。伴奏のピアニストならこの弾き違いを意識している。それでこそのプロである。なので、私は本職のソロ・ピアニストよりも、ランバート・オルキスやブルーノ・カニーノ、野平一郎、イリーナ・メジューエワのような伴奏のうまいピアニストを高く評価しているのだ。

2.移動ド(相対音感の世界)

 ドの音程が、調によって移動する音符の読み方になるので、固定ドの人からみると異端的で、天動説と地動説のような感じで受け入れできない人が多いが、もともとこの読み方は、由緒正しき西洋音楽の読み方であると説明した場合、驚かれる場合が多い。私の言っていることを信じる必要はないが、以下のサイトに書かれていることは、読んでおいた方が良い。

「中世の移動ド」事始め

移動ドの最高の利点は音楽の意味、例えば、移調する箇所、戻る場所を把握する必要があることから、音楽の意味、つまり楽曲分析をしつつ音符を読むことにある。それとバイオリン的に言うと、固定ドで意識する必要があった異名異音の音程の違いを考える必要がなく、正しい音程で演奏できるということになる。
下記の例だと、移動ドで読む場合のE♯は「シ」となり、主音ドであるFisの導音、すなわちFis-Durであると認識する。そうすれば導音シを高く取り、主音に繋げるということが自然にできる。


半音と全音

※セント値は端数を省略してある。
 正確には、
   狭い半音: 1200 × log2 (256/243 ) = 90.225 セント
   全  音: 1200 × log2 (9/8 )   = 203.910 セント
 広い半音: 203.910 - 90.225 =113.685 セント


問題は、相対音程ということなので、初めのドの音を低く取ったり、高く取ったりすると、他のレミファソラシの音程も狂うことになる。そういう意味で基準となる絶対音が必要である。バイオリンの場合は、それが開放弦のG、D、A、Eとなる。

なので、バイオリンの場合、絶対音感、相対音感を超える音感が必要となる。

ということで、ここまで読んでとても退屈であったろうと思うが、面白いのはここからで、私は、もっと実践的に音感を捉えていく。

さて、問題です。以下の楽譜を5分でなるべく音程が正しく取れるように考えて暗譜してください。なお、この曲は、チャイコフスキーの弦楽セレナードの第1バイオリンパートから取ってきたものですが、強弱記号は省いております。

エレジー中間部
 

おそらくプロは30秒くらいで完全に暗譜できると思うが、それには理由がある。

この問題は特に音程が良くなるように暗譜するということを絶対に考えて取り組んで欲しい。スラーやスタッカートを残してあるのはそういう理由があるからだ。イメージ記憶の丸暗記では意味がないのだ。なお、この回答については、このブログにある「拍手」が、今年中に50回を越した時に記載することにする。別に人気取りをする気持ちはないのだが、プロが知る技術を気軽に教えるのは、非常に心苦しい感じがするし、音程に関して真剣に取り組んでいる人にだけ読んで欲しいので、そういう人がどれくらいいるのか、そのおおよその数を把握しておきたいのである。

ということをご了承して頂いて、後の記事は読者次第ということで。


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新しい記譜法は暗譜に効能あり

「明けましておめでとうございます。」

と、世間ではおめでたい状況のようではあるが、こちらは悪戦苦闘している曲がある。
それは、モーツアルトのバイオリン協奏曲第4番のヨアヒムカデンツァである。現在の非力な私にとっては、このカデンツアは、ゲームの途中で出てくるボスキャラのように手強く、3ヶ月たっても全然うまくならず、母親からは、最近下手くそになっているのではないかという言葉も頂戴しているしだいである。

これがヨアヒムカデンツアの一部であるが、

ヨアヒムカデンツァ1

ここまではよい。

ヨアヒムカデンツァ2

こうなってくると、技術的にエグい。重音もさることながら、分散和音のところで指がすぐにスイッチできない部分が出てくる。

ヨアヒムカデンツァ3

ここまでくると、泣きである。楽譜を眼で追っている時間がないのである。

ということで、暗譜するしかないのであるが、なかなか覚えられない。

そこで、「知恵をめぐらせ、頭を使え。悩み抜け抜け男なら。」ということで、最新の記譜法を召還。その名は、『月光』、『7色仮面』ならぬ、Color5記譜法というものである。Color5とは、楽譜から記号としての#、♭、ダブルシャープ、ダブルフラットをなくして、その代りに音符に色をつけてやろうという、単純明快な記譜法である。

この記譜法、メシアンなんかの臨時記号満載の楽譜を簡単に読めるということで、一部、プロ・ピアニストでも使っている人もいるのであるが、

『ピアノ弾きもすなるColor5といふものを、バイオリン弾きもしてみむとて、我決行するなり。』

ということで実践してみたのが以下。

ヨアヒムColor5-1
ヨアヒムColor5-2

赤がシャープ、青がフラットである。なお本譜はニ長調であるが、調号がないことにも着目してほしい。

しばらくこの楽譜でやってみたのだが、

「うむ、なんと読みやすく、わかりやすいのだろう。特に重音の部分がうれしい。」

という一時的な効果ならず、暗譜もしやすいのだ。一回目のFはシャープで2回目はナチュラルになるというふうな覚え方よりも、そのままカラーグラフィックとして頭に入れていくという感じになり、記憶するのにワンクション省略できる気がする。特に和音のときの暗譜が非常に楽になるのである。慣れてくると調性も一目でわかるようになるのも副次的効果である。

調性のない現代音楽なんて、みんなこの記譜法を使うと、かなり敷居が低くなるので、よいのではないかとか思ったりする。






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