バイオリンと録音と

クラシックのコンサート、バイオリンの演奏方法、バイオリンのグッズについての記事多し。他、楽譜(Lilypond , Sibelius)、和声学、作曲、DTM関連を取り扱っております。

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『2本のバイオリンのための組曲』を登録しておきました。
https://drive.google.com/open?id=1ynOSxS_4CD97qe05fArVmIE9hvtV6TD5

音程マニア

「バイオリ弾きたるもの音程マニアでないといけない」
オーケストラの指導の先生がよくいう言葉である。私の師匠では、習わなかった音程の取り方をたまに教えてくださることがあり、ありがたい。その先生は、都内プロオケの現役の先生なのであるが、音程には特にやかましいのである。特に調弦の少しの狂いも見逃さない聴力はさすがであると思う。

なぜ調弦が大切かというと、バイオリンではこれが音程の基準になっているからである。この前、感心したのは、アマオケのコンサートマスターをつかまえて、その弦は古いのですぐに全部の弦を取り替えるように指導。弦のハーモニックスの音程が狂うときが、弦の替えどきであるのだが、そのわずかな狂いも聞き逃さなかったのだ。その人に関しては、音程に多少無頓着なところがあるので、その指摘には内心ほくそ笑んでしまったのであった。

このように人の不幸を喜んでいるようなお隣の国のような人であってはいけないことを反省しつつも、バイオリンにおける音程の取り方を師匠やプロオケの先生方々から部分、部分で教わることはあるのだが、系統だったメソッドがないのかとずっと考えていた。あるドイツ人のプロオケの女性コンサート・ミストレスに少し教わったことがあるのだが、日本で教えてもらっているレッスンよりもかなりシステム的、合理的にレッスンしてもらったので、なんか指南書があるのだろうと考えていた。

そして、その指南書の一つをようやくみつけた。
 それが、以下である。

 
Scales and Scale Studies: For Solo Violin
Simon Fischer
Peters, C. F. Musikverlag
2012-06-20


 購入してみてから驚いたのであるが、あのカール・フレッシュの音階教本よりも分厚いということ。ただ、カール・フレッシュと違いこちらの本の方が、より実践的にかかれている。具体的には、準備する指、指の押さえ方、離し方も全部事細かに記載されているのである。

「そうなんですよ、これがドイツ人コンミスが説明していた内容であったのですよ。」

オーケストラでは、半音階とか変ト長調とか、変ニ長調とか頻繁にでてくるので、これを正確にとる技術の習得に困っていたのであるが、音程をとるための練習パターンのバリエーションが膨大にあるので重宝する。 

これ一冊があれば、他の音階教本はいらないのではないかと思うくらいである。確かにこのメソッドにしたがって練習するとかなり正確に音程をとることができる 。ただ、この記事を読んで、ネット弁慶というか、先生に習わないで、「俺は天才だ。できるはず」と舞い上がっている人もいるかもしれないが、こういう教本でこそ、基礎をしっかり教えてくださる先生のもとで、自己流でなく、きっちり、ばっちりと歴史的に正しいやり方で本物の技術を学んでやっていく必要があるのだろうと思う。

短期間でも、きっちりとした先生にレッスンしてもらえば、おそらく格段に音程が綺麗にとれるようになるのだから、アマオケの演奏者で先生についていない人は、こういう技術の習得はきっちりとやった方が良い思うのだが、肝心なところでケチな人が多いのは不思議なことである。

ドイツ風カプリース その3

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

このように頭の中のコンサートの記憶が泡の如く消えてゆき、残りの18曲の感想は書けなくなったのだが、これぞバイオリン音楽の神髄ということで印象に残った部分を記載することにする。

ツェートマイヤーの演奏で面白いと思ったのが、この第8曲 Maestosoである。

2014-10-22-17-49-15


音価の長い定旋律上で細かい音符が動いていく。対位法の専門用語では、この定旋律をカントスフィルムスと呼ぶのかなあ。忘れてしまったけど。

ツェートマイヤーの演奏では、カントス・フィルムス上を動く音符は、カントス・フィルムスの変化によって音程も刻々と変化する。言い方を変えれば、声楽的に三度、六度を丁寧に純正にとっている。調律でいうとミーントーンぽい感じがする。このため、ピアノのような音程の取り方を絶対であると信じておられる方は、残念ながら音程が悪く聴こえてしまうかもしれない。

でもこれが本来のバイオリンの音程であり、古きよき時代の歴史的な伝統に立脚した演奏法である。こういう演奏は、ヨーロッパの伝統を受け継いできた奏者でしかできないものであり、ツェートマイヤーにかぎらず、ドイツ系のバイオリニストは、よくこうした伝統を踏まえているものと思う。

●音程の基本
 音程は固定されたものではなく音楽の前後関係で変化するものである。


そもそもコンクール・ミュージックという名のニセ・クラシック音楽の隆盛とともにピアノ的な音程感覚が横行し、曲本来の味が、グローバルと言う名の中国製フライドチキンに成り下がってしまったのであると、明言しているかのような演奏であった。

そういえば、最近、こうしたことを嘆いてか、古楽理論の普及によってか知らないが、この暗黒のグローバル世界に一筋の光を灯す偉大な教本が出版された。輸入楽譜のため入手がやや困難であるが、バイオリンの正しい音程の取り方についてより詳しく知りたい方は、一読されるとよいと思う。

Fischer, Simon "Scales and Scale Studies: For Solo Violin"

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