「バイオリ弾きたるもの音程マニアでないといけない」オーケストラの指導の先生がよくいう言葉である。私の師匠では、習わなかった音程の取り方をたまに教えてくださることがあり、ありがたい。その先生は、都内プロオケの現役の先生なのであるが、音程には特にやかましいのである。特に調弦の少しの狂いも見逃さない聴力はさすがであると思う。
なぜ調弦が大切かというと、バイオリンではこれが音程の基準になっているからである。この前、感心したのは、アマオケのコンサートマスターをつかまえて、その弦は古いのですぐに全部の弦を取り替えるように指導。弦のハーモニックスの音程が狂うときが、弦の替えどきであるのだが、そのわずかな狂いも聞き逃さなかったのだ。その人に関しては、音程に多少無頓着なところがあるので、その指摘には内心ほくそ笑んでしまったのであった。
このように人の不幸を喜んでいるようなお隣の国のような人であってはいけないことを反省しつつも、バイオリンにおける音程の取り方を師匠やプロオケの先生方々から部分、部分で教わることはあるのだが、系統だったメソッドがないのかとずっと考えていた。あるドイツ人のプロオケの女性コンサート・ミストレスに少し教わったことがあるのだが、日本で教えてもらっているレッスンよりもかなりシステム的、合理的にレッスンしてもらったので、なんか指南書があるのだろうと考えていた。
そして、その指南書の一つをようやくみつけた。
それが、以下である。
購入してみてから驚いたのであるが、あのカール・フレッシュの音階教本よりも分厚いということ。ただ、カール・フレッシュと違いこちらの本の方が、より実践的にかかれている。具体的には、準備する指、指の押さえ方、離し方も全部事細かに記載されているのである。
「そうなんですよ、これがドイツ人コンミスが説明していた内容であったのですよ。」
オーケストラでは、半音階とか変ト長調とか、変ニ長調とか頻繁にでてくるので、これを正確にとる技術の習得に困っていたのであるが、音程をとるための練習パターンのバリエーションが膨大にあるので重宝する。
これ一冊があれば、他の音階教本はいらないのではないかと思うくらいである。確かにこのメソッドにしたがって練習するとかなり正確に音程をとることができる 。ただ、この記事を読んで、ネット弁慶というか、先生に習わないで、「俺は天才だ。できるはず」と舞い上がっている人もいるかもしれないが、こういう教本でこそ、基礎をしっかり教えてくださる先生のもとで、自己流でなく、きっちり、ばっちりと歴史的に正しいやり方で本物の技術を学んでやっていく必要があるのだろうと思う。
短期間でも、きっちりとした先生にレッスンしてもらえば、おそらく格段に音程が綺麗にとれるようになるのだから、アマオケの演奏者で先生についていない人は、こういう技術の習得はきっちりとやった方が良い思うのだが、肝心なところでケチな人が多いのは不思議なことである。